ファイルサーバーのクラウド化は、オンプレミス環境の運用にまつわる非常に様々な課題に対する一つの解として多くの人が検討されています。
法人で運用されているファイルサーバーに関する悩みとして具体的には、以下のような事象があります。
◆よくある課題:
- ストレージ容量のひっ迫や管理
- ハードウェアのリプレースや維持保守にかかる作業
- ファイルサーバーの運用リソース不足や担当者の不在
- 運用自体は汎用的だがシステムトラブル時の業務影響が大きく運用リソース削減に踏み切れない など
ファイルサーバーの運用担当者が恒常的に抱えている上記のような課題もあれば、ビジネスを取り巻く以下のような環境の変化にも対応していく必要があり、運用担当者の負担は増えています。
◆ビジネスを取り巻く環境の変化:
- ワークスタイルの多様化によるセキュアなファイルアクセスのニーズ
- 電子帳簿保存法など法令改正への対応
- 2023年のWindowsServer2012のサポート終了の対応
さらに運用側の課題だけではなく、利用者側としてもファイルサーバーの利便性や業務生産性に関する課題は少なくありません。社内外のファイル共有の動作一つをとっても、年々取り扱うファイルやデータは大容量化し、従来のZip圧縮とパスワード別送といったメール添付によるファイル共有の手法や、利用し慣れないファイル共有ツールなど、ファイルを送る側と受け取る側双方にとってセキュリティリスクがあったり、利用を戸惑ったりする方法は避けたいものです。
そういった様々な背景から、物理的なファイルサーバーの運用をしながら、企業が効率的な業務を推進することは限界がきているともいえ、ファイルサーバーのクラウド化を進める企業は非常に増えています。
本記事ではファイルサーバーのクラウド化によって上記の様々な課題をブレイクスルーするだけでなく、クラウド化のデメリットと言われがちな点においては事前にポイントを押さえ、メリットを最大化するための解説をしています。
ファイルサーバーをクラウド化するとは?メリットとデメリットも解説
ファイルサーバーをクラウド化(クラウドで運用)するとは?
ファイルサーバーをクラウド化するという場合、以下の2パターンが想定されます。
➀IaaS (Infrastructure as a Service)インターネット上の仮想ストレージに自社で構築自社で運用(トラブル時は、自社構築箇所とIaaSベンダーの提供する仮想環境との原因切り分けも必要)
➁SaaS (Software as a Service)SaaSベンダーが構築SaaSベンダーが運用
利用者側は「ファイルサーバーの機能」を利用する
AWS(Amazon)やAzure(Microsoft)に代表される、いわゆるIaaS環境では、基本的にはクラウド化をする企業がクラウド上で割り当てられたコンピューティングリソースでサーバを構築、ファイルサーバーの機能として利用できる状態にする必要があります。IaaSの活用により、運用担当者が抱えるストレージ容量やハードウェアリプレースに関する課題は解消されますが、運用リソース課題や構築コスト、セキュリティ対策に関する課題は残ってしまいます。
この記事では、ファイルサーバーのクラウド化によって得られる利便性に加え、運用まで含めたトータルコストの削減や、IT部門のリソース不足の解消に寄与する、➁のSaaS活用・クラウドストレージサービスの導入をファイルサーバーのクラウド化と位置づけ、解説をすすめていきます。
ファイルサーバーのオンプレミス型とクラウド型の違い
オンプレミス型ファイルサーバーは、企業が自社の物理的な場所にサーバー機器を設置し、自己管理・自己運用を行うシステムです。
このシステムの大きな利点は、データ管理とセキュリティが企業の完全な管理下にある点にあります。物理的なアクセスが可能であるため、カスタマイズとコントロールの自由度が高く、特定の規制や業界基準に準拠する必要がある場合に特に適しています。
しかし、このモデルでは初期投資と継続的なメンテナンス、さらには専門的なITスタッフの維持に費用がかかることが課題です。
一方で、クラウド型ファイルサーバーはインターネットを通じてリモートのデータセンターにデータを保存・アクセスするシステムで、柔軟性とスケーラビリティが最大のメリットです。
使用するリソースに応じたコスト変動が可能で、ビジネスの成長や需要の変動に応じて容量を迅速に調整できるため、動的なビジネス環境に適しています。
クラウドサービスは専門的なITスキルが不足していても利用でき、運用の手間を大幅に削減できます。しかし、インターネットへの依存度が高く、セキュリティやプライバシー保護はサービス提供者のポリシーに左右される点が潜在的なリスクです。
近年ファイルサーバーのニーズが高まっている理由
近年、ファイルサーバーのニーズが高まっている背景には、社会全体の急激なデジタルデータの増加があります。企業においては、増え続けるデータを安全かつ効率的に管理することが重要な課題となっており、ファイルサーバーがこの要求に応える重要な役割を果たしています。
ファイルサーバーを活用することで、中央でデータを管理し、アクセス制御やデータ共有を容易に行うことが可能となり、業務の効率化と情報の整合性の維持が実現します。
さらに、新型コロナウイルスの影響で多くの企業がリモートワークを導入したことから、場所を選ばないアクセスが可能なクラウド型ファイルサーバーへの需要を加速させました。
このようにして、ファイルサーバーは企業が直面する新しい働き方やセキュリティの課題に対応するための解決策として注目されています。
ファイルサーバーをクラウド化するメリットとデメリット
ファイルサーバーのクラウド化は、企業の情報管理プロセスに多くのメリットをもたらします。しかし、注意すべきデメリットがないわけではありません。安全で効率的にファイルサーバーをクラウド化するためには、そのメリットとデメリットを総合的に理解し、企業のニーズに合わせた適切な導入計画を策定することが重要です。
以下で、ファイルサーバーをクラウド化するメリットとデメリットを詳しく解説していきます。
ファイルサーバーをクラウド化するメリットは?
オンプレミスの社内ファイルサーバーの代替として、SaaSのファイルサーバーを導入すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。クラウド化で得られる代表的なメリットを4つ紹介します。
➀クラウド化は導入および運用のコスト、導入リードタイムを抑えられる
ファイルサーバーのクラウド化の最も大きなメリットは、導入と運用にかかるコストを抑えられることです。導入にあたって初期費用がかからないクラウドストレージサービスも多く、月額または年額費用の負担のみで常に最新のサーバ環境でストレージ機能を利用できるのが魅力です。
導入時は物理ハードウェアや管理用ソフトウェア、バックアップソフトウェア等の調達業務、調達費用は不要となり、あくまでサービスの利用につき、管理者側もクラウドストレージのユーザー割り当て等するだけで、その他の構築作業は必要ありません。従来、オンプレミス環境の構築やリプレースに費やしていた時間も他の業務にシフトすることが可能です。
クラウドファイルサーバーの料金形態は、「定額制」と「重量課金制」の2種類が一般的です。
➀定額制 | 固定金額を支払う |
---|---|
➁従量課金制 | 必要なユーザー数やストレージ容量に応じて課金 |
予算や経営の観点からは定額制の方が見通しを立てやすいといメリットもありますが、容量無制限のプランでは利用頻度に関わらず1ユーザーあたりの単価が高くなりがちという面があります。利用用途やユーザーの業務に合わせてサービスを選択する事がポイントです。
また、定額制のサービスにおいてユーザー数が無制限のサービスプランを提供しているベンダーもあります。その場合はストレージ容量を追加する際の単価も忘れずに確認をしましょう。このほか、高精細な動画や画像を主に扱う業務や、IoT関連の大容量データ分析のためのデータレイク用途など、大容量のストレージ環境が必要な場合により高コストパフォーマンスで利用できるサービスなど、いずれにしても自社の利用用途に最適なプランをまずはベンダーに相談してみましょう。
➁ファイルサーバーのクラウド化ならリモートワークにも対応できる
近年は特に、ワークスタイルやビジネス環境の変化によってオフィス以外で勤務する「リモートワーク制度」や「テレワーク制度」を導入する企業が増えています。そういった制度の導入が急速に進む中で、社外からVPN経由で従来のオンプレミスファイルサーバーにアクセスする際にネットワーク帯域が不足し、業務が滞ったというケースも少なくはありません。
ファイルサーバーをクラウド化して利用する場合、インターネット接続さえ確保できれば、場所を選ばずに必要なファイルやデータにアクセスでき、社外で働く社員が多い企業や、社内ネットワークが使えない環境でもファイル共有をする業務が頻繁に発生する組織に適したサービスといえます。
また、クラウドファイルサーバーの機能は様々で、サービスによっては必要なメンバー間で「ファイル共有」したり「ファイルの共同編集」をしたりといった使い方ができるものもあります。クラウドファイルサーバーの「ファイル共有」機能の多くは、メールに添付して都度ファイルを送受信するよりも効率的かつセキュリティの面でも安全と言えます。サービスによっては、万が一ファイルを誤送信した場合の「共有停止」機能が備わっていたり、ファイル共有をする際の上長承認を必須にしたりといったことも可能です。
こういった機能に代表される、オンプレミスのファイルサーバーではシステム化しきれなかった運用が、クラウドファイルサーバーを利用する大きなメリットの一つと言えるでしょう。
➂ファイルサーバーの運用保守はクラウド化だからベンダーに一任できる
ファイルサーバーをクラウド化した場合は、自社で運用保守をする必要はありません。ソフトウェアや機能のアップデートを含めてベンダーにすべて任せられるのは非常に大きなメリットです。
一般的に、ファイルサーバーは業種や業界を問わずに必要かつ業務への影響も大きいミッションクリティカルなシステムではあるものの、その運用自体は汎用的な業務でもあります。だからこそベンダーに委託できる範囲は大きく、クラウドファイルサーバーを活用することで自社のITリソースをより戦略的なDX関連業務などに振り向け、組織の変革を推進できるようになります。
また、SaaSの基盤であるハードウェア等に障害やトラブルが起こった際にも、サービス自体は冗長構成によって可用性が保証されており、且つ有事における復旧作業自体は当然ベンダーが対応するため、自社内にファイルサーバーの運用知識をもつ社員がいなくても安心して導入することが可能です。
大企業はもちろん、ITリソースに余裕がない中小企業やスタートアップ企業であっても、費用のみだけではなく、社員のリソースや負荷を抑えて導入、利用できることがファイルサーバーのクラウド化のポイントです。
➃災害発生時のリスクヘッジ・BCP対策としてもクラウド化は有効
ファイルサーバーをクラウド化した場合は、災害発生時におけるファイルサーバー内のデータ破損・消失のリスクを最小限に抑えられます。ベンダーがサービスの基盤として利用しているデータセンターは地震・水害・火災などのあらゆる災害を想定した堅牢な構造となっており、それらの多くはデータセンター内だけでなく、複数データセンター間で冗長化を図ることで、サービスの停止や復旧の遅れといったリスクをコントロールしています。
また、自社が火事や浸水などの災害でダメージを受けた場合も、遠隔地にあるデータセンターは被害を受けず運営できる点もクラウド化のメリットです。オンプレミスのファイルサーバーは自社内に物理マシンを設置するため、被災するとデータそのものも破損してしまう事となります。さらにバックアップデータに影響がなかった場合も、リストア作業や復旧までの間の業務への影響は甚大です。また、最終バックアップのタイミングから災害発生時までに更新されたファイルのリカバリーができないという課題への対処も必要となってくる等、一度トラブルが発生すると場合によっては他業務の継続が難しくなる可能性もでてきてしまうのです。
その点、ファイルサーバーをクラウド化している場合は、万が一自社オフィスが被災してもインターネット回線さえ復旧すればファイルストレージへアクセスできるため、業務再開が迅速かつ容易になります。ファイルサーバーのクラウド化は、事業継続の観点でも非常にメリットがあるといえます。
⑤アップデートやメンテナンスの際の情シスの運用工数を削減できる
クラウドサービスを利用することで、IT部門の負担が大幅に軽減されます。従来のオンプレミス環境では、サーバーのアップデートやセキュリティパッチの適用、ハードウェアの故障対応など、日々のメンテナンス作業が専門スタッフによって手作業で行われる必要がありました。
しかし、クラウドサービスの場合、これらの作業はサービスプロバイダーによって行われるため、情報システム部門はより戦略的な業務に集中することが可能になります。
⑥ファイル共有の利便性が高まる
クラウド化されたファイルサーバーは、地理的な制限を受けずにデータへのアクセスができます。従業員がオフィスにいない場合やリモートワークをしている場合でも、インターネットがあればどこからでもファイルにアクセスでき、共有が容易に行えます。
この柔軟性は、チームの協働を促進し、プロジェクトの進行速度を向上させるため、特に分散しているチームや複数の地域に拠点を持つ企業にとって大きな利点となります。
また、クラウドサービスには、ファイルのバージョン管理やアクセス権限の設定など、高度な管理機能が備わっており、これによりファイルの整理と保護がさらに向上します。
ファイルサーバーをクラウド化するデメリットとその対策は?
ファイルサーバーをクラウド化する際のデメリットを把握することは、より自社にフィットするサービスの比較につながります。
ここでは代表的なデメリットとその対策を4つ紹介します。
➀ユーザーの通信環境に影響を受けやすい
ファイルサーバーのクラウド化にまつわるリスクとしては、通信状況によってファイルサーバーを利用できなくなる場合がある点です。例えば、Wi-Fiやルーターなどインターネットに関連するトラブルの発生や災害があると、クラウド上のデータにアクセスできなくなってしまいます。ネットワーク環境を含めたクラウドサービスが復旧するまでの間は、クラウド環境に保存しているデータを利用できないため、結果的に業務に支障が出てしまうというものです。
一部のクラウドファイルサーバーではそういったトラブル時の対策として、キャッシュ機能を活用しオフラインでもファイルの参照や編集を継続可能なものがあります。例えば、出張時の移動中やリモートワーク等の通信状況が悪い環境下で業務を継続する必要がある際には、このような機能は非常に有効です。サービスを比較する際にはオフライン時でのファイル利用可否も確認しておくとよいでしょう。
➁クラウドサービスの機能はパッケージ化され、カスタマイズ性が低い
クラウドファイルサーバーのインフラやシステム機能はベンダーがサービスとして提供しているため、ファイルサーバーに必要な標準的機能を短期間で整備できる利点がある一方で、自社の業務に合わせた機能カスタマイズは難しくなります。
サービスによっては、オプションで機能追加できるものもあるため、自社の利用用途や現場のニーズをもとに機能要件を明確にし、スムーズに導入を進めましょう。
なお、ここではあえてデメリットとして記載しましたが、従来であれば運用に合わせて費用をかけてカスタマイズをしていたオンプレミスの発想から、自社の業務やニーズに沿うサービスを正しく比較することで、使いやすく汎用化された機能をあますことなく活用し、サービスのバージョンアップや時代に合わせた新しい機能を活用することができる点は、クラウドのメリットを最大限享受しているとも言えるでしょう。
➂ファイルサーバーをクラウド化することで従来環境の管理・運用方法を変える必要がある
ファイルサーバーをクラウド化する際に運用方法への影響が大きいポイントのひとつはアクセス権限設定に関する操作や管理でしょう。クラウドファイルサーバーのサービスによっては、アクセス権限が上位の特定フォルダ階層にしか設定できず、深いフォルダ階層では個別のアクセス権限のコントロールができないものもあります。
このようなサービス仕様の特徴として、ファイルサーバーのがフラットな構造になることが挙げられ、従来のファイルサーバー運用では可能だった、直感的でわかりやすい情報共有が困難になる場合があります。一方で、オンプレミスのファイルサーバーやNAS運用を継承しやすい設計をコンセプトにしているサービスもあります。日本の企業では組織別のフォルダ構成を階層的に作り、役職や業務ごとにアクセス権限を設定しているケースが多く、この運用を再現できるサービスを選ぶことは特に「法人内ファイルサーバーのクラウド化」という観点では重要でしょう。
➃情報資産の保管場所としてのカントリーリスクが懸念される
ファイルサーバーをSaaSでクラウド化した場合、何らかの理由でサービスが終息するなど、継続利用に影響が出る可能性も否定できません。これらのリスクを最小にするために、サービス比較時にはベンダーの実績や信頼性のほか、サービス基盤や通信が海外の法規制下で管理されたり、海外含む外部に開発や運用保守を委託していたりする場合のカントリーリスク(※)も考慮しながら、検討をすすめるべきでしょう。
(※)特定の国の政治情勢や経済情勢の変化によりもたらされるネガティブな影響や、法令や当局による情報開示や差し押さえなどの恐れを「カントリーリスク」と表現しています。
クラウドサービスのカントリーリスクに関する記事でもこの点を詳しく紹介しています。
⑤月額利用料金がかかる
クラウドサービスは継続的なコストが発生する点もデメリットといえるでしょう。特に大規模なデータを扱う企業の場合、データの量に応じた料金が発生し、長期にわたる利用ではかなりの費用が積み上がる可能性があります。
この問題に対処するための主な対策は、クラウドサービスプロバイダーを慎重に選定し、コストパフォーマンスが最適なプランを選択することです。
また、不要なリソースは削減し、データ管理を効率化することで、必要なストレージ量を抑える努力が必要です。定期的な監査を行い、使用していないリソースが課金されていないか、常にチェックすることも重要です。
⑥セキュリティ確保への設定や運用には注意する必要がある
クラウドサービスでは、データが外部のサーバーに保存されるため、セキュリティの問題が懸念されます。
データ漏洩や不正アクセスのリスクを最小限に抑えるためには、サービスプロバイダーが提供するセキュリティ対策を正確に理解し、必要な設定変更や追加のセキュリティ層を適用することが必須です。
エンドポイントのセキュリティ強化、暗号化技術の利用、アクセス管理の厳格化など、多層的なセキュリティ対策を施すことが重要です。
また、従業員に対するセキュリティ意識の向上と定期的な教育を実施することも、セキュリティ確保には欠かせません。
法人がファイルサーバーをクラウド化する際のサービスの選び方
ファイルサーバーをクラウド化する際に、特に法人として確認しておきたいポイントは、以下の7点でしょう。
➀ストレージ容量 /追加容量 | 各ベンダーのサービスによって、利用できるストレージ容量は異なります。既存ファイルサーバースペックや運用を考慮してサービスメニューを比較しましょう。 |
---|---|
➁機能 | ファイルのアクセス権限設定、多様なファイル共有パターン等、サービスに実装されている機能もベンダーによって様々です。ストレスの無い操作性が実現できるかを含め、トライアルサービスで実際の使用感を確認するのがよいでしょう。 |
➂費用 (初期・月額) | ユーザー毎、データ容量毎、容量無制限など各ベンダーのサービス毎に課金の体系が異なります。また、初期費用の有無や、オプションによる追加費用の有無をチェックするようにしましょう。 |
➃セキュリティ | ユーザー認証やアクセス権管理、通信およびデータの暗号化、監査証跡・詳細ログ。SSL対応やウイルスチェック等など、自社のセキュリティ要件に照らして必要な対策・機能が実装されているかを確認しましょう。 |
➄ユーザビリティ | 特別なトレーニングなしで直観的に操作できるか、操作ミスを防止しやすいユーザーインターフェースであるか、等を確認しましょう。Webからの操作だけでなく、Windowsのエクスプローラからクラウドにアクセスできるアプリケーションを提供しているサービスもおすすめです。 |
➅サポート体制 | トラブルや障害発生時だけでなく、セットアップや導入後も想定して、サポート体制やサポート拠点、対応言語について事前に確認するようにしましょう。 |
➆データ移行 | オンプレミスのファイルサーバーやNASからのデータ移行が簡単に行えるサービスがおすすめです。専門知識がなくてもデータ移行ができる転送ツールを無料で提供しているサービスを選びましょう。 |
それぞれの項目に対し自社の要件を整理し、利用目的に合うサービスやメニューの比較をするようにしましょう。
法人がファイルサーバーをクラウド化する際に無料プランが最適ではない理由
クラウドファイルサーバー、クラウドストレージサービスはいくつものベンダーから提供されており、サービスメニューによっては無料で利用が可能なものも珍しくはありません。
個人単位では無料のクラウドファイルサーバーを利用した経験がある方は多く、非常に気軽に様々なデバイスから利用できることで広く普及していることは事実です。とはいえ、法人がファイルサーバーをクラウド化する場合は、無料サービスプランを避け有料版の導入を強くお勧めします。
その理由を3点ご紹介します。用途として、社内ファイルサーバーやNASの代替としてクラウドファイルサーバーの活用を検討するのであればなおのこと、以下は参考にしてみてください。
➀クラウド化した場合にセキュリティ対策の機能が自社の要件を満たさない
セキュリティ対策がどのようにサービスに実装されているかは必ず確認するべき点ですが、その他にも運用のしやすさや、意図せず情報漏洩につながるような操作をさせないシステムデザイン、詳細なアクセス権限設定が可能な点も重要なポイントとなります。これらの面において無料サービスプランは、個人のプライベート用途であったりデータの保存期間に期限があったりするなど、法人の「ファイルサーバー」として一般的な業務に耐えられるものではないと考えるべきでしょう。
また、会社が管理しない無料クラウドストレージサービスを社員が許可なく業務利用することで、「シャドーIT」と呼ばれる未知のセキュリティリスクが発生します。そういったリスクの蔓延を防ぐ対策として、ユーザビリティに優れた有料クラウドファイルサーバー環境やセキュアな有料ファイル共有ツールを整備する必要があり、それらは必要コストといえるでしょう。
➁万が一のトラブル時にベンダーサポートを受けられない
万が一のトラブル時にベンダーサポートを受けらなかったり、対応が簡易的であったりする場合があります。そもそも自社のセキュリティ要件を満たさない仕様である等、気軽に利用できることと引き換えに組織としての統制は取りづらい点も有料版をおすすめする理由として挙げられます。
➂クラウドファイルサーバーは業務に必要な機能が不十分
無料のクラウドストレージサービスの多くは、アクセス権設定や、フォルダの閲覧権限の設定が非常に簡易的であったり、データ容量や保存期間、ログ機能にも制限があったりします。そのため仮に法人がファイルストレージの一部として利用する場合や、ファイル共有のツールとして利用する場合、業務効率化とセキュリティ対策の観点で得られるものは多く無く、むしろリスク要素が大きいことを認識したうえで導入の判断する必要があります。
無料版との違いは、クラウドストレージの仕組みに関する記事でもご紹介しています。
ファイルサーバーをクラウド化する際の移行方法
ファイルサーバーをクラウド化するメリットや、サービス導入時に比較したいポイントも把握したうえで、実際の導入に向けて避けては通れないのが既存システムからの「データ移行作業」です。移行のパターン3つを次で具体的に確認しましょう。
➀自社でクラウドファイルサーバーに移行する
既存のファイルサーバーのシステムや運用、導入するクラウドファイルサーバーのサービス仕様を理解し、且つ社内のスキルや導入期間にも余裕がある場合は、自社体制のみでシステムをクラウドストレージ環境に移行することは不可能ではないでしょう。初期費用がない場合は月額/年額の費用のみで利用開始ができ、ベンダーに対するキャッシュアウトを最小限にできるパターンです。ベンダーによっては、ユーザー企業自身での移行を支援する体制や、無料の移行ツールを用意している場合もありますので確認してみましょう。
➁クラウドファイルサーバーへの移行を外部へ委託する
クラウドサービスのベンダーや、サービス仕様をよく理解している販売パートナー等、社外に移行を委託するパターンです。プロジェクトの管理は必要ですが、自社内のリソースに余裕がない場合はこういった作業をベンダーに依頼することは可能です。ただし、機密データを取り扱う作業となるため、信頼できるベンダーと慎重にプロジェクトを進めることになります。
➂クラウドサービス側で提供される移行ツールを活用し、自社で移行する
クラウドストレージサービスの種類によっては、移行用のデータ転送ツールが無料または有料で提供されているサービスもあります。サービス側で用意されている移行ツールとしては、既存のシステムを止めずに段階的に移行できる仕組みや移行期間中の差分ファイルを更新できるものもあります。専門知識がなくても簡単に操作できるツールを提供しているサービスもありますが、コマンドの記述が必要であったりサポートのレベルに応じて費用が変動したりと、ベンダーによって異なるため、自社の人的リソースや導入までの期間やコストも鑑みたうえで、移行方式と計画を策定しましょう。
ファイルサーバーのクラウド化ならFileforceがおすすめ
クラウドサービスとしてのメリットを最大限享受し、デメリットを感じさせない性能を兼ね備えたクラウドストレージサービスとしてFileforceは非常におすすめです。具体的な特徴として4点ご紹介します。
➀クラウドならではの圧倒的なコストパフォーマンスと充実した機能
従来のファイルサーバー同様の操作性は確保しつつ、ファイル保管やセキュアなファイル共有が実現でき、管理者によるアクセス権設定やフォルダ構成の作成もきめ細やかに設計が可能です。ユーザー数無制限プランを中心に、スモールスタートからエンタープライズ利用まで、幅広いニーズにお応えするサービスが揃っています。
➁クラウド化するからこそ高セキュアに。法人利用に必須のセキュリティ対策を実装
Fileforceは、ファイルサーバーの運用を最も継承しやすいクラウドストレージであることをコンセプトに開発された日本のサービスです。
フォルダやファイルへの詳細なアクセス権限設定機能や詳細な操作・アクセスログの保管により、情報漏洩対策やセキュリティインシデント発生時の対応を強力に支援します。通信時含めてファイルは暗号化され、また、ユーザー端末にデータが残らない非同期型のサービス設計で端末自体の紛失や盗難時の情報漏洩リスクも最小化できるサービスです。
設計開発もすべて日本国内の体制で手掛ける純国産サービスで、カントリーリスクへの対応も万全です。
➂無償データ転送ツールでスムーズなクラウド化とデータ移行をサポート
Fileforceは無償データ転送ツールを提供しています。既存のファイルサーバー・NASを運用しながらデータ移行が行えるほか、移行期間中の差分チェックと再転送機能もあるので 安心して作業を進めていただけます。またわかりやすいダッシュボード画面で移行の進捗を確認でき、業務に影響を与えずに大容量データも楽々移行が可能です。
➃ファイルサーバーのクラウド化と合わせて改正・電子帳簿保存法にも対応可能なオプションも
【参考】改正・電子帳簿保存法に対応したFileforce運用のイメージ
こちらのオプションについては電子帳簿保存法の対応の記事にてより詳しくご紹介しています。
2022年1月に施行される「改正・電子帳簿保存法」への対応も、Fileforceならスムーズに運用を始められます。詳細なログ証跡や厳格なアクセス管理等の標準機能に加え、「改正・電子帳簿保存法対応オプション(※)」でより効率的な帳簿書類の管理が実現します。
社内・社外でファイル共有するためのその他のサービス10選
社内・社外でファイル共有するためのその他のサービス10選
現代のビジネス環境では、効率的かつセキュアなファイル共有システムが組織の生産性を大きく左右します。特にリモートワークが増加する中で、社内外のコラボレーションをスムーズに進めるためには、業務に適したファイル共有サービスの選定が欠かせません。
以下で、機能的で信頼できるファイル共有サービスを紹介していきます。
Dropbox Business
Dropbox Business は、50万以上の企業や法人が利用しており、業界をリードするクラウドストレージプロバイダーの一つです。
ファイルの保存、共有、アクセスをシンプルかつ効率的に行うことができます。
セキュリティ面では、256ビットAES暗号化とSSL/TLS通信でデータを保護し、外部および内部の脅威から企業データを守ります。さらに、チームフォルダの管理機能により、アクセス権限を細かく設定することができ、組織のセキュリティポリシーに柔軟に対応可能です。
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
SECURE DELIVER
SECURE DELIVER は、富士フイルムイメージングシステムズが提供する高セキュリティファイル共有サービスです。
大容量のファイル送信に特化しており、最大60GBのデータを一度に安全に送信できます。送信されたファイルは、SSL暗号化を通じて保護され、ダウンロードリンクの有効期限設定や一度のダウンロード後にリンクを無効にするオプションがあり、データのセキュリティを強化します。
さらに、事前承認機能を用いることで、ファイル送信前に内容を確認でき、誤送信のリスクを減少させることができます。
クラウド型 ファイル送受信サービス SECURE DELIVER | 富士フイルム
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
クリプト便
クリプト便 は、NRIセキュアテクノロジーズが提供する企業向けのファイル共有サービスです。特に金融機関や公共機関など、高度なセキュリティが求められる業界での利用に適しています。
TLSを利用した通信の暗号化、多層的なファイアウォール、WAFによる攻撃防止策など、堅牢なセキュリティ対策が整っています。また、ファイル送信・受信のログ管理機能を通じて、どのユーザーがいつどのファイルを送受信したかを詳細に追跡でき、監査対応や内部統制の強化に役立ちます。
セキュアなファイル転送やファイル共有に特化した「クリプト便」|NRIセキュア
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
クロジカ 大容量ファイル管理
クロージカ大容量ファイル管理は、TOWN株式会社によって提供されている大容量ファイル管理サービスです。
特に、大量のデータが日常的にやり取りされる企業に最適化されています。
クロージカは、ファイルごとにパスワード設定や閲覧期限を設定することが可能であり、URL共有による簡単なアクセス方法が特徴です。加えて、ログ管理やバージョン管理機能を備え、セキュリティと利便性のバランスを高いレベルで実現しています
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
Box
Box は、グローバルに広く認知されているクラウドベースのファイル共有サービスです。
最大7段階の細かなアクセス権限設定や、AES 256ビット暗号化など、高度なセキュリティ機能を備えています。
さらに、1,400を超えるアプリとの連携が可能で、ファイルへのアクセスや共有が容易に行うことが可能です。
Box — セキュアなクラウドコンテンツ管理、ワークフロー、コラボレーション
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
Box/Box over VPN
Box over VPNは、NTTコミュニケーションズとの連携により提供されているコンテンツ・マネジメント・プラットフォームです。
無制限のストレージや、Salesforceなどの業務アプリケーションとの連携を特長としています。
また、閉域網を通じたセキュアなファイル共有が可能で、外部脅威から保護しながら、Boxの全機能を利用できます。特にセキュリティが重視される企業において、外部のリスクからデータを守るために適しています。
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
NotePM
NotePM は、ドキュメントとノートを中心とした情報共有ツールであり、プロジェクト管理機能も兼ね備えています。
Markdown対応のテキストエディタを使用しており、文書の整理や管理が直感的に行えます。
また、チームメンバーとの情報共有を簡単かつ効果的にするためのタグ付けやカテゴリ分けが可能で、プロジェクトの進捗状況をリアルタイムで把握できます。
高度なセキュリティ対策もされており、暗号化通信やアクセス監視機能によってデータの安全を保ちながら、社内外のメンバーとの効果的な協働を促進します。
NotePM – 社内wikiでナレッジ共有・マニュアル作成
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
OneDrive for Business
OneDrive for Business は、Microsoftが提供するエンタープライズ向けのファイルストレージおよび共有サービスです。
ビジネスユーザーがファイルをクラウド上で安全に保存、共有、そしてアクセスできるように設計されています。特にOffice 365との統合が特徴で、WordやExcelなどのアプリケーションとシームレスに連携し、ドキュメントのリアルタイム編集や共同作業を可能にします。
高度な暗号化と多層的なセキュリティ対策も備えており、企業の重要なデータを保護します。また、管理者向けの監視ツールも提供されており、組織全体のファイルアクセスを簡単に管理できます。
OneDrive for Business (microsoft.com)
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
コワークストレージ
コワークストレージは、NTT東日本が運営するクラウドストレージサービスです。
オンプレミス型の社内フォルダと同様の操作感で、社内外でのファイル共有をスムーズに行うことができます。
データの暗号化やログ監視などのセキュリティ機能も万全で、安心してテレワークなどを行えます。
国内にデータ保管および冗長構成がされているため、データ消失のリスクが軽減されています。
コワークストレージ-NTT東日本のクラウドストレージ|サービス|法人のお客さま|NTT東日本
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
GigaCC ASP
GigaCC ASP は、日本ワムネットが提供する高セキュリティを誇るファイル共有サービスです。特に大規模企業やプロジェクトチーム間での大容量ファイルの共有に対応しています。
セキュリティ対策は業界トップクラスで、IPアドレス制限、強力な暗号化技術、ウイルスチェック、多要素認証といったオプションを提供し、企業間のデータ転送と共有を安全にサポートしてくれます。
また、使用するユーザー数やデータ量に応じた柔軟な料金プランが用意されており、大量のデータ取扱いが必要な場合でもコストを抑えつつ運用が可能です。
※本記事に記載している会社名やサービス名は、各社の商標または登録商標です。
ファイルサーバーをクラウド化する際の注意点
ファイルサーバーの移行方法や体制が決まれば、以下の4点に注意しながら慎重に移行をすすめることになります。
➀移行後の運用が変更になる場合のマニュアル整備・移行スケジュールアナウンス
ファイルサーバーの移行に伴い、業務影響がある部署やメンバーに対しては、事前に移行スケジュールやツールのマニュアルを配布し、アナウンスをすることで移行後も運用がスムーズに定着するでしょう。前提として、なるべくこれまでのファイルサーバーの運用を変えずにスムーズに新システムに移行できるサービスを選ぶことで、社内のトレーニングコストや情報システム部門の負担削減につながります。ユーザーにとっても慣れた操作感であることは、システムの定着が容易であるとも言えます。
➁クラウド化の前にデータバックアップを取る
ファイルサーバー移行中の障害等、万が一の事態に備えてデータのバックアップや復旧の段取りを確認しておきましょう。
➂クラウド環境で移行するデータの優先順位付けをする
データのボリュームが大きい場合は移行にも時間がかかります。そのため、優先度の高いデータから効率的・段階的にデータを移行しましょう。また、新環境に移行する前に、ファイルサーバーのデータ整理をしたり重複データは削除したりする等、この機会に一度棚卸しを行いフォルダやファイルの整理をした上で移行を行うことをお勧めします。
➃クラウドストレージへのデータ転送速度や進捗を監視
ファイルサーバーのデータをクラウドへ行こうする際、データボリュームやネットワーク帯域の制限により時間がかかったり、障害が発生してデータが破損したりする可能性がないわけではありません。データボリュームの大きいのファイルを移行する際は、転送速度を確認しつつデータを分割したり、ネットワーク負荷に応じて転送量を調整したりすることで、移行を円滑に進められるでしょう。
移行するデータの容量が大きい場合には、移行に使用するネットワーク帯域の制限や転送進捗の確認方法等、ベンダーと相談しておくと安心です。
まとめ
この記事では、ファイルサーバーのクラウド化におけるAWSやAzureなどのIaaS活用とSaaS活用の違い、SaaS活用のメリットと、実際に法人がサービス導入を検討する際に知っておくべき、デメリットを作らないための注意点、サービス選定時の比較項目についても紹介してきました。
データボリュームの肥大化への対応やコスト低減など、社内ファイルサーバーの運用管理に関する課題の解決につながるクラウド化ですが、サービスの利用用途や導入目的、自社の使用方法に合わせて、わかりやすくストレスを感じない操作性はもちろんのこと、導入前から運用開始後まで、システム管理者の負担を削減しながら、安心して効率的な業務を行える機能があるかを確認、比較もしながら高品質なサービスを見極めていただければと思います。