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AD(Active Directory)とは?連携できるクラウドサービスも紹介

公開日:
更新日:
2024/07/24
目次

AD(Active Directory)は、マイクロソフトが開発・提供しているディレクトリ機能です。Windows Serverの機能の一種で、企業や組織において、ユーザーやデバイスの認証と認可を一元管理することで、セキュリティの強化と運用の効率化を実現します。

本記事では、ADの基本知識や関連する用語を説明し、ADの機能や使用上の注意点などを詳しく解説していきます。また、ADと連携できるクラウドサービスについて紹介します。

ぜひ最後まで御覧いただき、ADに関する知識を深めてください。

AD(Active Directory)とは?

AD(Active Directory)は、組織内のユーザーやコンピューターなどのリソースを一元管理するためのディレクトリサービスシステムです。Windows Server環境において中心的な役割を果たし、セキュリティの強化、リソースの効率的な管理を実現します。このシステムは、組織内のITインフラを構築、管理する上で重要な要素となっています。 以下で、ADの基本知識についてさらに詳しく解説していきます。

ADの概要

ADは、マイクロソフトが提供するディレクトリサービスの一つで、Windows Server上で動作します。ADは組織内の人々が使うコンピューターやその他のデバイス、そしてユーザー自身の情報などを格納して整理し、管理するためのデータベースとして機能します。 ADを利用することで、管理者は組織内のリソースへのアクセス権を効率的に管理できるようになり、ユーザーは必要な情報やサービスにスムーズにアクセスできるようになります。

ADを導入するメリット

ADを導入することによるメリットは、以下のようなものが挙げられます。

  • セキュリティの向上
  • ユーザー管理の効率化
  • シングルサインオン(SSO)の実現
  • IT管理の複雑化への対応

セキュリティの向上

ADを利用することで、組織内のすべてのユーザーとそのアクセス権限を一元的に管理できます。これにより、不正アクセスや情報漏洩のリスクを効果的に減少させることが可能となり、組織の貴重なデータを保護することができます。

管理の効率化

ADを導入することで、システム管理者による管理作業が効率化できます。組織が抱える膨大なリソースを一元管理し、ある程度の自動化が可能なため、管理者の煩雑な業務を効率化できるのです。

シングルサインオン(SSO)の実現

ADの導入によって、シングルサインオン(SSO)を実現できることもメリットの一つです。シングルサインオンは、ユーザーが一度ログインするだけで、ADに登録されている複数のアプリケーションやサービスにアクセスできるようになる機能です。これにより、複数のパスワードを使い回すことによるセキュリティリスクを回避でき、アカウント管理の負担も軽減できます。シングルサインオンによる作業効率の向上は、ユーザーにとっても管理者にとっても大きなメリットです。

IT管理の複雑化への対応

組織が成長し、IT環境が複雑化するにつれて、ADの柔軟性と拡張性が大きなメリットとなります。ADはスケーラブルな構造を持っているため、組織の成長に合わせて容易に拡張することが可能です。また、複数の地理的位置に分散しているオフィス間でのリソース共有も簡単に実現でき、組織全体のIT管理を一元化することができます。

ADの認証方法

ADの認証プロセスは以下のとおりです。

  1. ADの認証プロセス
  2. ユーザーがIDとパスワードを入力
  3. ドメインコントローラーにてユーザー情報を照合
  4. ユーザー情報が一致すれば「チケット」を発行
  5. チケットを使用してリソースにアクセス

ADでは、主に「Kerberos認証」と呼ばれる認証方法が採用されています。 Kerberos認証は、ユーザーがログイン時にユーザー名とパスワードを入力すると、その情報は、「ドメインコントローラー」と呼ばれる認証サーバーに送信され、データベースの情報と照合されます。ユーザー情報が一致すると、ドメインコントローラーはユーザーに対して「チケット」と呼ばれる認証トークンを発行します。このチケットを使用して、ユーザーは様々なリソースにアクセスできるようになります。

AD(Active Directory)に関する用語

AD(Active Directory)を理解する上で、その基礎となる用語の意味を明確にしておく必要があります。 以下では、ADに関連する重要な用語について、詳しく解説していきます。

ドメイン

ドメインは、ADにおける基本的な構成単位であり、ネットワークリソースの管理領域のことです。一つのドメイン内では、ユーザー、コンピューター、プリンターなどのリソースが共通のセキュリティポリシーの下で管理され、リソースへのアクセス制御が一元的に行われます。ドメインは、組織の構造や管理の必要性に応じて設計され、複数のドメインが相互に信頼関係を持つことで、より大きなネットワーク環境を形成します。

ドメイン内の各リソースは、ドメインコントローラによって管理され、ドメインコントローラはユーザー認証やポリシーの適用など、ドメイン内のセキュリティと整合性を保持する役割を担います。

組織単位

組織単位(Organizational Unit)は、ADのディレクトリサービス内で、ユーザー、グループ、コンピュータなどのリソースを階層的に管理するためのコンテナです。組織単位は、ADの構造内で管理の範囲を定義し、特定のグループや部門に対して細かいアクセス制御ポリシーを適用することができます。 また、ADでは、組織単位ごとに管理者を指定し、その管理者に対して特定の管理タスクを委譲することができます。

ドメインツリー

ドメインツリーは、複数のドメインが階層的に組織された構造を指します。この構造において、各ドメインは親子関係を形成し、信頼関係を通じて互いに連携します。 ドメインツリーは、大規模な組織や企業が複数の部門や地域にわたってITリソースを管理する際に特に重要となります。例えば、本社と複数の支社がそれぞれ独立したドメインを持つ場合、これらを一つのドメインツリーに組み入れることで、組織全体で統一されたセキュリティポリシーの適用や、リソースの共有が容易になります。

フォレスト

フォレストは、一つ以上のドメインツリーが集まって形成される、ADの最上位の構造単位です。フォレスト内の各ドメインツリーは、共通のスキーマ、グローバルカタログ、ディレクトリ構成を共有します。この共有により、フォレスト内の異なるドメインツリー間でのリソースアクセスや検索が容易になり、組織全体のITインフラを一元的に管理することができます。

シングルサインオン

シングルサインオン(SSO)は、ユーザーが一度の認証で複数のシステムやアプリケーションにアクセスできるようにする認証方法です。これにより、ユーザーは異なるサービスを利用する際に複数のパスワードを覚える必要がなくなり、一度のログインで必要なリソースにアクセスできるため、作業効率が向上します。 また、AD環境におけるシングルサインオンは、セキュリティ管理も強化します。シングルサインオンを利用することで、認証情報の管理が中央集権化され、不正アクセスのリスクを低減することができるのです。

AD(Active Directory)の機能

AD(Active Directory)は、組織内のITリソースを効率的に管理し、セキュリティを強化するための強力なツールです。ADには、企業や組織のITインフラを効率よく管理するための機能が多く備わっています。 以下では、ADの主要な機能について、詳しく解説していきます。

ユーザー情報の管理

ADの最も基本的な機能の一つが、ユーザー情報の管理です。ADを使用することで、組織内の全てのユーザーのプロファイル情報を一箇所で管理できます。管理者は、これらの情報を利用して、組織内のユーザーに対して適切なアクセス権を設定し、必要なリソースへのアクセスを容易にします。

また、ユーザー情報の一元管理により、IT管理者は新しいユーザーの追加、既存ユーザーの情報更新、退職者のアカウント削除など、ユーザー管理に関連する業務を迅速かつ正確に実行することが可能になります。

ユーザーID・パスワードの管理・保護

ユーザーIDとパスワードの管理・保護は、ADのセキュリティにおいて中核をなす機能です。ADは、ユーザーが組織内のリソースにアクセスする際の認証プロセスを管理し、不正アクセスの防止に重要な役割を果たします。

ADでは、強力なパスワードポリシーを設定することができ、ユーザーが複雑で安全なパスワードを使用するよう強制することが可能です。また、パスワードの有効期限や履歴の管理も行うことができ、セキュリティを一層強化します。さらに、多要素認証やスマートカードなどの認証方法と組み合わせることで、ユーザー認証のセキュリティレベルをさらに高めることができます。

条件付きアクセス

条件付きアクセスの機能も、ADのセキュリティ機能の中で重要な機能の一つです。条件付きアクセスは、ユーザーのアクセス要求を評価し、特定の条件を満たしている場合にのみリソースへのアクセスを許可します。例えば、特定のデバイスからのアクセスや、特定の地理的位置からのアクセスを制限することができます。また、ユーザーが特定のセキュリティ要件(例えば、多要素認証を完了していること)を満たしている場合にのみ、重要なリソースへのアクセスを許可するように設定することも可能です。

条件付きアクセスにより、組織は柔軟かつ精密なアクセス制御ポリシーを実装することができ、セキュリティの向上とリソースの保護を図ることができます。

ソフトウェアや外部デバイスの管理

ADは、ソフトウェアや外部デバイスの管理においても便利な機能を備えています。IT管理者は、組織内のすべてのデバイスに対して、ソフトウェアのインストールやアップデート、ライセンスなどを一元管理することが可能です。これにより、ソフトウェアのバージョンを組織全体で統一することができ、ライセンス違反などのリスクを避けることができます。

また、特定のアプリケーションやデバイスを特定のユーザーグループにのみ割り当てたり、USBドライブなどの外部デバイスの使用を制限するポリシーを設定することも可能です。これにより、データ漏洩などのリスクを減少させることができます。

操作ログの閲覧・管理

操作ログの閲覧・管理は、ADの監査機能としての役割を果たします。ADは、ユーザーのログイン試行、リソースへのアクセス、ポリシー変更など、組織内のIT環境におけるあらゆる操作を記録します。これらのログを分析することにより、不正アクセスやポリシー違反などのセキュリティインシデントを迅速に検出し、対応することが可能になります。 また、操作ログはコンプライアンスの証明や、将来的なセキュリティポリシーの改善に向けた貴重な情報源となります。ADによる操作ログの記録と管理は、組織のセキュリティ体制を強化し、IT環境の透明性を高めるために不可欠です。

AD(Active Directory)の注意点・デメリット

AD(Active Directory)は、組織内のリソース管理とセキュリティ強化において非常に強力なツールですが、導入や運用にあたってはいくつかの注意点やデメリットが存在します。これらを理解し、適切に対処することで、ADのポテンシャルを最大限に引き出すことが可能です。以下では、ADを利用するうえでの注意点やデメリットを解説していきます。

初期設定のコストと手間がかかる

ADを導入する際には、初期設定に多くのコストと手間がかかります。ADの構築には、必要となるハードウェアの選定・準備から、ネットワーク設定、セキュリティポリシーの策定に至るまで、様々なプロセスが必要です。特に、企業や組織が大規模であったり、内部の構造が複雑である場合、これらの作業は複雑化し、高度な専門知識を要します。 しかし、この初期投資は、ADによるセキュリティの向上や、リソース管理の効率化といった長期的に受けることのできる恩恵を考慮した場合に、価値のある投資となる可能性が大きいです。

設定次第では業務が複雑になる

ADの設定は非常に柔軟であり、組織のニーズに合わせて細かくカスタマイズすることが可能です。しかし、この柔軟性が逆に業務を複雑化させる原因となることもあります。特に、ポリシーの設定やアクセス権の管理を過度に細分化しすぎると、管理が煩雑になり、運用コストが増大します。また、設定の誤りがセキュリティリスクを引き起こす可能性もあります。そのため、ADの設定は、セキュリティと運用のバランスを考慮しながら、シンプルかつ効果的な方法を選択することが重要です。

サーバーがダウンすると業務に支障が出る

ADは中央集権的なリソース管理システムであるため、ADサーバーがダウンすると、組織内のユーザー認証やリソースアクセスに大きな支障が出ます。例えば、ADサーバーが利用不可能になると、ユーザーはネットワークリソースへのアクセスができなくなり、業務が停滞してしまいます。

また、災害やハードウェアの故障など、予期せぬ事態が発生した際には、迅速な復旧作業が求められますが、これには高度な技術力と事前の準備が必要です。そのため、ADサーバーの冗長化やバックアップ体制の整備、災害復旧計画の策定など、サーバーダウン時のリスクを最小限に抑えるための対策が不可欠です。

AD(Active Directory)連携可能なクラウドサービス

クラウドサービスの普及に伴い、ADの機能をクラウド環境に拡張し、より柔軟かつ効率的な運用を実現するためのサービスが登場しています。以下では、AD連携可能な、二つのクラウドサービスについて紹介します。

Microsoft Entra ID(旧Azure AD)

Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)は、マイクロソフトが提供するクラウドベースのIDおよびアクセス管理サービスです。 Microsoft Entra IDの主な機能を以下にまとめました。

シングルサインオンユーザーは一度のサインインで、Microsoft 365、Microsoft Azure などの関連サービスにアクセスできます。
高度なセキュリティ多要素認証、条件付きアクセス、リスクベースのアクセス制御など、高度なセキュリティ機能を備えています。
アクセス制御管理者は、ユーザーの属性やデバイス情報に基づいて、アクセス権を細かく制御できます。
シームレスな統合マイクロソフトのクラウドサービスとシームレスに統合し、一貫したユーザーエクスペリエンスを提供します。

Microsoft Entra IDは、特にマイクロソフトのクラウドサービスを広く利用している組織にとって、価値の高い選択肢と言えます。

AWS Managed Microsoft AD

AWS Managed Microsoft ADは、AWS クラウド上でマイクロソフトのAD(Active Directory)をフルマネージドで提供するサービスです。このサービスを利用することで、ユーザーは従来のオンプレミス環境と同様に、AWSリソースへのアクセス管理、シングルサインオン、ディレクトリ同期などの AD機能をクラウド環境で実現できます。

AWS Managed Microsoft ADの主なメリットとしては、以下のようなものがあります。

運用負荷の軽減:
サーバーの運用・管理(OSのメンテナンス、パッチ適用、障害対応など)はAWSが代行するため、ユーザーは煩雑な作業から解放され、よりビジネス価値の高い開発に注力できます。

高い可用性:
冗長構成がデフォルトで提供されるため、システムの可用性を高め、信頼性の高いディレクトリサービスを利用できます。

シームレスな連携:
オンプレミスのADとシームレスに連携し、クラウドとオンプレミス環境全体で一貫したID管理を実現できます。

セキュリティと耐障害性:
AWSの強固なセキュリティと耐障害性の高いインフラストラクチャ上で運用されるため、企業のITリソースを安全かつ効率的に管理できます。

AWSを積極的に活用している企業にとって、AWS Managed Microsoft ADは、マイクロソフトのAD機能をクラウドに拡張する上で理想的な選択と言えるでしょう。

まとめ

AD(Active Directory)は、企業や組織のITインフラを支える重要な役割を担っています。ユーザー情報の一元管理からセキュリティ強化、リソースの効率的な運用に至るまで、ADが提供する機能は多岐にわたります。しかし、その導入と運用には、初期設定のコストや管理の複雑さ、システムダウンによるリスクなど、いくつかの課題も伴います。

これらの課題に対しては適切な計画と対策が必要ですが、ADを導入することは組織にとって、非常に大きな価値を持ちます。また、ADと連携可能なクラウドサービスを利用することで、その利便性と拡張性はさらに広がります。

本記事を通じて、ADに対する知識を深め、より安全かつ効率的なIT環境の構築に役立てていただけることを願っています。

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