社内サーバーを運用する上では、さまざまなセキュリティリスクが発生します。主なリスクを知って適切な対策を講じることが、安全な運用につながるでしょう。起こりうるリスクや社内サーバーに効果的な対策、管理方法について解説します。
社内サーバーで起こりうるセキュリティリスク
セキュリティ上のリスクは企業活動にとって大きなマイナスになります。業務上のトラブルだけでなく、取引先からの信用に関わることもあるでしょう。適切な対処のためにも、まずは社内サーバーで考えられるリスクを知っておくことが重要です。
データにアクセスできなくなる
近年では企業のサーバーや端末をウイルス感染させ、システムの復元と引き換えに身代金を要求する『ランサムウェア』の被害が急増しています。
ランサムウェアに感染した場合、サーバー内のデータが勝手に暗号化され、データを閲覧したり編集したりできなくなってしまいます。
データを復元させようと攻撃側の要求に従ったとしても、データを復旧してくれる保証はありません。二度と元に戻せなくなる恐れもあるでしょう。
これまでランサムウェアの攻撃対象は主に大企業でしたが、最近では中小企業が被害に遭うケースも増えてきているため会社規模に関わらず注意が必要です。
データ自体が消失してしまう
データ自体が消失してしまうリスクがあるのも、社内サーバーが抱える課題の一つです。データ消失の原因で最も多いのはヒューマンエラーです。
操作を間違えてファイルやフォルダを削除したり、データを上書きしてしまったりするミスが考えられます。
サーバーの故障やソフトウェアのトラブルが発生した場合も、データが消失しかねません。
物理機器である社内サーバーは、さまざまな要因で破損する可能性があります。サーバーにインストールされているOSやソフトウェアの不具合にも注意する必要があるでしょう。
情報漏えいによる社会的信用の失墜
第三者からの不正なアクセスやウイルスの感染により機密情報や個人情報が漏えいすると、企業の社会的信用を失ってしまう恐れがあります。
特に注意しなければならないのが個人データの流出です。顧客の個人情報が漏れてしまうと、慰謝料などの損害賠償を請求されることもあるでしょう。
情報漏えいが発生した企業には行政指導が入るケースもあります。業務停止や免許はく奪といった措置もとられかねません。
企業の重要データが漏えいした場合、大きな損害を被るリスクがあることに注意が必要です。
社内サーバーで実施すべきセキュリティ対策
社内にサーバーマシンを置くケースで有効なセキュリティ対策を紹介します。あらゆるリスクを想定し、万全な対策を講じましょう。
セキュリティソフトを導入し最新に保つ
ランサムウェアなどウイルスによる被害からファイルを保護するためには、セキュリティソフトの導入が有効です。
社内が使う各端末だけでなく、自社サーバー自体にも専用のセキュリティソフトを入れておく必要があります。
テレワークで働く社員がいる場合は、社員が自宅で使用する端末にもセキュリティソフトを導入するよう指導しましょう。
パソコンやサーバーに被害を及ぼすウイルスは、進化しながら数も増え続けています。強まるウイルスの脅威に備えるため、セキュリティソフトは常に最新の状態に保っておくことが重要です。
IDとパスワードの管理を徹底する
ネットワークへの不正な侵入を防止する対策として、各端末にはログインを制限するIDとパスワードを設定するのが基本です。
しかしIDとパスワードが外に漏れてしまうと、ログイン権限を持たない第三者の侵入を許すことにもなりかねません。
ログイン情報が入った記録メディアや自動ログインできる端末を紛失しないよう、徹底した管理を社員に指示する必要があります。推測されやすいパスワードを設定しないようにするのも安全な運営のポイントです。
社内でセキュリティに関する研修や教育を実施し、情報漏えいが発生した際の被害などリスク管理の意識付けを行いましょう。
認証サーバーを導入しアクセス権を管理
データが不正に利用されるのを防ぐためには、ファイルやフォルダごとに異なるアクセス権を設定できる認証サーバーの導入が有効です。
特定のデータに対して、閲覧のみできる人・編集もできる人・出力が可能な人など、使う人ごとにさまざまな種類の権限を細かく設定できます。
アクセス権を管理することで、不正アクセスや社員のヒューマンエラーによる情報漏えいのリスクを低減できます。システム管理者の負担軽減にもつながるでしょう。
アクセスログを取り、適切に監視する
セキュリティ対策の一つに、ファイルのアクセス履歴が分かる『ログ管理』と呼ばれるものがあります。
ログとは、ファイルにアクセスした端末や時間・ファイルの編集内容などが記録された情報のことです。
ログ管理機能でアクセスログが定期的に確認されていることを社員に伝えておけば、データの不正利用を未然に防ぐ抑止効果が期待できます。
万が一データが流出してしまっても、残されたアクセスログを利用することで拡散防止や原因究明につなげられる可能性があります。
ハード以外のセキュリティ対策も重要
企業におけるセキュリティ対策として、社員による人的ミスや不正を防ぐための対策も重要です。社員には適切なセキュリティ対策を指導しましょう。代表的な社内向けの対策を二つ紹介します。
社員によるデータ持ち出しを制限する
社員の中には、自宅でも作業するために会社で使用しているデバイスを持ち帰ったり、社内のデータをUSBメモリなどに保存して持ち帰ったりする社員もいるでしょう。
しかしファイルの紛失や流出のリスクを考えると、社外へのデータの持ち出しは非常に危険です。
社内データはどのような理由があっても社外に持ち出してはならないことをルール化し、社員に周知徹底しておく必要があるでしょう。
テレワークの導入により社外で仕事を行う社員が増えてきた場合は、場所を問わず安全にデータを利用できるオンラインストレージの導入もおすすめです。
運用ルールを策定して社員に徹底させる
企業のセキュリティ対策では、データの持ち出しだけでなくサーバーの運用に関してもルールを策定しておく必要があります。
例えばファイルの紛失防止には、保存先フォルダをあらかじめ整理しファイルの種類ごとに保存すべきフォルダを決めておくとよいでしょう。
ファイルの名前の付け方にも統一ルールを定めておけば、誰が見てもどのようなデータなのかが一目で分かります。
バックアップの方法や電子媒体の廃棄に関しても細かいルールを設け、社員研修や新人教育などの機会に徹底して指導することが重要です。
社内サーバーを適切に運用する環境づくり
社内サーバーのセキュリティリスクに対しては、技術と人の両方で万全な対策を施すことが解決につながります。特に社員に教育を行う際には、ルールを守れる環境づくりがポイントです。
『セキュリティ対策の重要性』を浸透させる
社員向けのルールを作成しても、社員全員がきちんとルールを順守してくれるとは限りません。またどれだけ気を付けていたとしても、人的ミスはそれなりに発生するものです。
技術面での対策と社員への対策としてできることをしっかりと行った上で、社員にセキュリティ対策の重要性を浸透させることが重要です。
徹底した意識付けがなされていれば、単にルールだけを作成しただけのケースと比べてヒューマンエラーが発生しにくくなるでしょう。
まとめ
社内サーバーで起こりうるリスクには、ウイルス感染や機器の故障・情報漏えいなどがあります。セキュリティソフトの導入やログ管理などのセキュリティ対策を施すことが重要です。
社員に対しても、ID・パスワードの管理やデータの持ち出しなどに関する危機意識を持ってもらい、全員で共有できるルールも作成しておきましょう。