ファイルサーバーの導入を検討しているなら、同時にNASやオンラインストレージへの理解も深め、それぞれのメリット・デメリットを比較し選定することで、ユーザにとって最適な業務環境の整備ができるしょう。各システムの特徴や相違点、選び方のポイントを解説します。
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ファイルサーバーの基本と種類
ファイルサーバーは、ネットワーク上のデータ管理に特化した重要なコンピューターです。ファイルサーバーの基礎知識と四つの種類について解説します。
ファイルサーバーとは?
LANやWANといったネットワークに組み込んで他の端末とデータ共有やファイルのやり取りができるコンピューターのことを、ファイルサーバーといいます。
自社でファイルサーバーを構築する際には、一定のスペックを満たしたハードウェア(ファイルサーバー)の用意が必要です。サーバーは長期間にわたって安定した稼働が求められるため、普段業務に使っているパソコンをサーバーとして利用することはできません。
また、社員それぞれのパソコンに管理しているデータをファイルサーバーに保管すれば、別のパソコンからもネットワークを介してデータを読み書きできるようになり、ファイルを一元管理することが可能です。
ファイルサーバーは目的や仕組みの違いにより、『NFSサーバー』『Sambaサーバー』『FTPサーバー』『WebDav』の4種類に大別できます。
NFSサーバー
NFSとは『ネットワークファイルシステム』とも呼ばれる規格の名称で、NFSサーバーはファイルを共有できるストレージを持っています。LinuxなどUNIX系OSのほとんどで標準搭載されており、最近ではWindowsOSやmacOSでも利用されています。
サーバー上のストレージ領域をローカル端末にマウントできることがNFSサーバーの特徴です。マウントされたストレージ領域はローカル環境と同じように利用できるため、幅広い目的で使えます。
ファイルを一つのストレージに集中すことで複数のクライアント端末から同一ファイルにアクセスが可能です。それによって、管理の簡素化や記憶領域の節約にもつながります。
Sambaサーバー
主にUNIX系OSで動作し、WindowsOSとの互換性を備えたサーバーです。WindowsOSにおけるデータ共有の仕組みをLinuxなどのUNIX系OSでも利用したい場合に使われます。
OSの中でも圧倒的なシェアを誇るWindowsOSは、悪意ある第三者からの攻撃対象になりやすく、大きなセキュリティリスクを抱えているのがデメリットです。
一部の企業や官公庁では、WindowsOSにおけるセキュリティリスクを回避するためUNIX系OSを積極的に導入しているケースがあります。
Sambaサーバーを使えば、UNIX系のOSを使う企業でもWindowsOSで動作するデータ共有の仕組みを使えるようになるため、UNIX系OSユーザーの間で幅広く普及しています。
FTPサーバー
FTPサーバーは、FTPというプロトコルによりファイルの送受信を行うサーバのことです。
主にWebサイトの制作・公開・管理において、インターネット上でWebサーバーとつながっているサーバーがFTPサーバーです。Webサーバーに対してクライアント(Webページにアクセスするユーザー)がファイルをアップロードしたりダウンロードしたりする際に利用されます。
クライアントとFTPサーバーの通信では、パスワードが暗号化されずアカウント情報が平文でやり取りされるため、通信中のセキュリティリスクが問題となります。
WebDav
WebDavはWebサーバーからクライアントへのファイル送信で用いられる通信方式『HTTP』を拡張し、Webサーバー内のファイルやディレクトリを直接管理できるようにした仕組みです。
HTTPでWebの閲覧が可能な環境であれば、WebDavを利用してWebサーバーにアクセスできます。FTPで通信できない環境やHTTPプロキシを経由した環境でも、サーバーに接続できるのがメリットです。
WebDavを利用すれば、ストレージ上のファイルシステムを扱うのと同様の操作感でWebサーバーのデータを管理できます。
ただし誰でもアクセスできるようにするとセキュリティリスクが高まるため、権限を設定しユーザーを制限するのが一般的です。
ファイルサーバーとNASの違い
ネットワーク上のデータ管理場所としてファイルサーバーとよく比較されるものに『NAS』が挙げられます。この二つにはどのような特徴の違いがあるのでしょうか。NASの概要やファイルサーバーとの違いを解説します。
NASとは
NASとは『Network Attached Storage』を略したもので、さまざまなデータを保存できる場所としてネットワーク上で利用するストレージ機器です。
パソコンごとにケーブルでつないで個別利用するHDDとは異なり、ネットワークの中に組み込んで利用するため、ネットワーク上にあるすべての端末で外付けHDDのように使えます。
同じネットワークにつながっていれば、パソコンだけでなくスマホやタブレットからもアクセスできるのが特長です。接続環境によっては社外からもデータ共有できます。
近年はデータの保存以外にも、さまざまな機能が搭載されている機種が出てきました。目的や環境に合わせ、自社に適したタイプのNASを選択することが可能です。
ファイルサーバーとNASの相違点
ネットワーク上でデータを一元管理できるという点では、ファイルサーバーとNASに違いはありません。
両者における最も大きな相違点は、導入時の専用ソフトや詳細設定の必要性です。ファイルサーバーでは、専用ソフトのインストールやシステムの詳細設定を行わなければなりません。
NASにはあらかじめ単体で動作する仕組みが整っているため、ソフトのインストールやシステム設定などを行わずに済みます。ファイルサーバーはコンピュータとしての意味合いが強く、NASはハードディスクとしての意味合いが強いともいえるでしょう。
ファイルサーバーとオンラインストレージの違い
ネット上でデータを管理できるシステムとして、近年注目を集めているのが『オンラインストレージ』です。データを保存・共有できるという点はファイルサーバーと共通していますが、仕組みやできることは異なってきます。
ファイルサーバーとの相違点を確認しておきましょう。
オンラインストレージとは
インターネット上でデータを保存・共有できる記憶領域のことを『オンラインストレージ』と呼びます。クラウドストレージやクラウドサーバーと呼ばれることもあります。
社内に構築したLAN環境の拠点を経由し、インターネット回線を通して社内の端末からネット上の保存領域にデータをアップロードして保存する仕組みです。
自社で機器を用意する必要がなく、サービス提供事業者が保有する仮想スペースがデータの記憶領域として割り当てられます。
保管場所を物理的なサーバーからクラウド上に移行すればサーバー本体を手元に置かなくてもよくなるため、管理の費用や手間を減らせるなど数多くのメリットがあります。
ファイルサーバーとオンラインストレージの相違点
ファイルサーバーは社内の限定されたネットワーク上にあるため、同じネットワーク環境内にある端末からしかデータへアクセスできません。
一方オンラインストレージは開かれたネットワークであるインターネット上に存在しているため、インターネットに接続できる端末であれば場所を問わずファイルにアクセスできます。
また職場内に設置するファイルサーバーは自社で管理しなければならず、メンテナンスやセキュリティ対策を実行できるスタッフが必要です。オンラインストレージは運営事業者のサービスとして提供されるため、管理業務全般を事業者側に任せられます。
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各システムのメリットとデメリット
ファイルを保存・共有できるファイルサーバーやNAS・オンラインストレージには、それぞれメリットとデメリットがあります。知識を備えておけば自社での導入の際、どれを選ぶのがよいか判断しやすくなるでしょう。
ファイルサーバーのメリットとデメリット
ファイルサーバーに保存したデータは、ダウンロードしなくてもダイレクトに編集できます。編集後もサーバー上で上書き保存されるため、業務効率を高められます。
機能性やカスタマイズ性が高いこともメリットです。アクセス権限の詳細な設定や保存領域の増設などに対して、比較的柔軟に対応できます。大容量のデータを扱う企業や使用者の多い企業に向くでしょう。
デメリットとして、導入や運用にコストがかかりやすいことが挙げられます。ライセンス登録や専用ソフトの購入・人材の確保など、さまざまな費用が発生するでしょう。
運用開始までに時間がかかることにも注意が必要です。詳細な設定やセキュリティ対策を自社で行わなければならず、規模が大きくなるほど準備期間も長くなります。
NASのメリットとデメリット
運用開始時に特別な作業を必要としないNASは、導入のしやすさや導入コストの安さがメリットの一つです。費用を抑えてすぐに始めたい場合に向いています。
操作性やメンテナンス性の高さも魅力です。データの保存・共有に特化しているため、シンプルな操作で扱うことができ保守作業にも大きな手間はかかりません。
一方NASではサーバー上でデータの編集ができないため、業務効率を落としやすいデメリットがあります。機能性や拡張性も低めなので、利用者が少ない小規模の企業や、データの保存・共有だけの目的でサーバーを利用したい企業に適しているでしょう。
オンラインストレージのメリットとデメリット
インターネットにつながってさえいれば、場所・時間・デバイスを問わずデータにアクセスできることがオンラインストレージのメリットです。
ストレージの運用・管理はサービス提供事業者が行ってくれるため、手間や時間がかかりません。最新版へのアップデートも自動で実行されます。
管理費を抑えられるのも魅力です。多くのオンラインストレージは比較的安価で導入・運用できるため、人件費を含めたコストを削減できます。
デメリットは、自社で自由にカスタマイズできない点やトラブル発生時に自社で迅速に対応できないことです。また、サービスによってはセキュリティリスクが高まることもあります。
ファイルサーバーを選ぶ上での注意点
ファイルサーバーやNAS・オンラインストレージはそれぞれ得意不得意が違います。サーバーの導入を検討する際は自社の規模に合わせて選ぶ必要が出てくるでしょう。これからの時代はオンラインストレージを検討すべき理由も解説します。
自社にあった規模で検討する
ファイルサーバーは大勢で使用しても安定したパフォーマンスを発揮しやすいため、目安としては利用人数が50人を超えるような企業での導入に向いています。
一方NASは接続端末数が増えると処理速度が落ちやすい特性から、大人数での利用には向かず、ファイルサーバーよりも少人数での利用に適していると言えるでしょう。
無駄なコストを発生させたり業務効率を落としたりしないように、自社の企業規模に合わせて検討することが大切です。
オンラインストレージ(クラウド化)も検討しよう
ファイルサーバーは、基本的に社内での利用を想定したシステムです。社外からファイルを閲覧したり、編集をしたりするためにはVPN等を導入する必要があります。
多様な働き方に柔軟に対応するために、社外からもファイルにアクセスできるようにするには、追加の費用や手間がかかることになります。
テレワークが増える現代において、単体では外部接続が難しいファイルサーバーは時代のニーズに合わなくなってきたといえます。
クラウド化により社員の働き方を見直せるだけでなく、取引先とのやりとりも円滑化できます。特にこれからサーバーの導入を検討している企業には、オンラインストレージがおすすめです。
おすすめのオンラインストレージ3選
これからの時代に対応できる法人向けのオンラインストレージサービスを紹介します。機能面やセキュリティ対策を確認し、導入の参考にしましょう。
大容量2GB送信可能『Bizストレージファイルシェア』
NTTコミュニケーションズが運営するストレージサービスです。2GBの大容量データをWebブラウザだけで送信できます。
ウイルスチェックや不正アクセス防止など、セキュリティ機能が豊富に搭載されています。通信事業者ならではの高い安定性も魅力です。
定額制を採用しており、プランによっては最大1万人で使えます。大人数でシステムを利用したい企業におすすめです。
NTT Com | Bizストレージ ファイルシェア | NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま
社外とのファイル共有に特化『Smooth File』
アカウント数による課金が一切発生しない、ファイル共有に強みを持つストレージサービスです。社外ユーザーのアカウントも無制限で作成できます。
柔軟なセキュリティポリシー設定や細部にわたって網羅されたセキュリティ機能など、徹底した安全対策がとられていることも特長です。
大容量ファイルを送受信できるだけでなく、ファイル誤送信を防止できる上長承認機能や利用状況の把握に役立つログ管理機能などが標準装備されています。
Smooth File
ユーザー数無制限で万全のセキュリティ『Fileforce』
全社のあらゆるファイルを保存・管理できる、安全性と利便性を兼ね備えたストレージサービスです。パソコンだけでなくスマホやタブレットなど、さまざまなデバイスで利用できます。
ファイルサーバーと同様の細かなアクセス権限やデータの有効期限・共有設定などができ、法人利用の際にも安心のセキュリティが備わっています。
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Fileforce (ファイルフォース) | 法人向けクラウドストレージ
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まとめ
企業で使えるファイル管理システムには、ファイルサーバー・NAS・オンラインストレージなどさまざまな種類があります。
ファイルサーバーとNASが自社管理であるのに対し、オンラインストレージは事業者が管理するためコストや手間を削減できるのが魅力です。
オンラインストレージであれば外部からのアクセスもしやすいため、サーバーの導入を考えているならオンラインストレージを中心に検討してみましょう。