ファイル転送サービスにはさまざまな種類があります。その中から自社に適したサービスを選ぶには、どのように使いたいかを明確にすることが大切です。この記事ではファイル転送サービスの概要から、おすすめサービス・代替案まで解説します。
ファイル転送の特徴とサービスの基本
社内外の関係者とファイルを共有する際に利用できるのが、ファイル転送サービスです。どのような特徴のあるサービスなのでしょうか?まずはファイル転送サービスの性質と必要性を見ていきましょう。
Web上で大容量のファイルやデータを届けられる
ファイル転送サービスとは、インターネットを介してファイルの送受信ができるサービスです。送信側がクラウド上のサーバーにファイルをアップロードし、受信側がダウンロードして受け取る仕組みです。
画像や動画など大容量になりがちなファイルでも、ファイル転送サービスなら手間なくスムーズに送受信できます。
なぜファイル転送サービスが必要なのか
以前はファイルを相手に送信する際、メールに添付する方法が主流でした。現在でも添付メールで対応できるファイルやデータもありますが、大容量ファイルを扱う場合には容量不足で送れません。
とくに映像や音楽を扱う企業や出版・医療といった業界では、一つのファイルが数十GBになることも珍しくありません。また現代では企業のプロモーションに動画を使うケースなどもあり、業種を問わず大きなサイズのデータを扱う機会が増えてきました。
大容量ファイルを手間なく送信する手段として、ファイル転送サービスが必要とされています。
ファイル転送サービスを使うメリット
関係者へファイルを送るためにファイル転送サービスを利用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?サービスの導入で得られる具体的なメリット確認しましょう。
大容量のファイルを速く確実に送れる
まず挙げられるメリットは、大きなサイズのファイルを素早く送信できる点です。メールの添付ファイルとして送る場合、容量の上限は20MBほどというケースが多いでしょう。
ファイル転送サービスであれば、500MBや2GBといったサイズのファイルを送信できます。サービスやプランによっては容量無制限での利用も可能です。
メールでは分割や圧縮しなければ送信できないファイルでも、一度にそのまま届けられれば手間が減ります。送受信にかかる時間が短くほぼリアルタイムでファイルを共有できるため、情報にタイムラグが生じにくくなるでしょう。
記憶媒体を使うよりもコスト低減が可能
これまでUSBメモリといった記憶媒体を使ってファイル共有をしていたなら、低コストで大容量ファイルを送受信できるファイル転送サービスはコストの削減に役立ちます。
記憶媒体を購入する費用だけでなく、郵送や宅配などで届けるにも費用がかかります。大容量ファイルの受け渡しをすればするほどコストが大きく膨らむのが、記憶媒体を使った受け渡しのデメリットです。
ファイル転送サービスを使えば、記憶媒体の購入費用がかかりません。送受信にはサービスの利用料が必要ですが、定額制のサービスであればどれだけ利用しても料金は一定です。利用するほど1件あたりの料金が安くなります。
データのやりとりが頻繁な企業では、定額制で使えるファイル転送サービスを導入することで大幅にコストを削減できる可能性があります。
誤配や紛失のリスクも減らせる
記憶媒体を用いた受け渡しには誤配や紛失のリスクがつきまといます。例えばUSBメモリを入れたバッグを置き忘れることで、大切なデータを紛失する可能性があります。郵便で送った場合には記入ミスや誤配送で第三者に情報が漏れる危険もゼロではありません。
万が一の事態に備えて格納するファイル自体を暗号化するといった対策は可能ですが、いくら対策したとしても物理的な受け渡しでは限界があります。できるだけリスクを減らせるシステムを利用した方が安心でしょう。
ファイル転送サービスでデータの共有をすれば記憶媒体を持ち出す必要がないため、紛失のリスクを減らせます。
ファイル転送サービスのデメリット
大容量ファイルを低コストで送受信できるファイル転送サービスにはデメリットもあります。具体的なデメリットを知り、導入時の参考にしましょう。
情報漏えいリスクをゼロにはできない
情報漏えいのリスクを減らすようセキュリティ対策が実施されているファイル転送サービスですが、リスクを完全には排除できません。
インターネット上にアップロードすることや、不特定多数の利用者とサーバーを共有していることなどによるリスクは回避しきれないのです。ダウンロード用URLを誤った相手へ送るといったヒューマンエラーの可能性もあります。
セキュリティ対策の自社統制が困難
ファイル転送サービスのセキュリティ対策は、サーバーを所有しているサービスの運営会社が担います。そのため社内でのセキュリティ対策が難しい点はデメリットです。
サーバーは他のユーザーと共有になるため、自社のセキュリティポリシーに合わせて機能やオプションを追加するといった使い方にも不向きです。導入する際には自社のセキュリティポリシーを確認した上で検討しましょう。
ファイル送受信管理が難しい
利用履歴の確認ができない点もファイル転送サービスのデメリットです。ファイルの送受信を確実に管理するには、自社でリストを作成するなどの対策が欠かせません。
ファイルを送信した後、本当に正しい相手に間違いなく送信できているか確認したい場合もあるでしょう。アップロードしたファイル名・日付・送信先などをリストにしておくと、送信した後に見直せるため安心です。
ファイル送信サービス比較のポイント
さまざまなファイル送信サービスがある中から自社に合うものを選定するには、ポイントを押さえた比較が欠かせません。確認すべきポイントを押さえ、最適なファイル送信サービスを選びましょう。
容量は十分確保されているかどうか
送信できる容量が十分でないと、せっかく導入したファイル転送サービスを活用できません。容量はファイル送信サービスごとに異なり、一度に送れる容量に制限があるタイプや月ごとの合計容量が決まっているタイプがあります。
また扱うファイルの容量によっては、無制限で利用できるサービスが向いているかもしれません。自社でよく送信するファイルサイズを確認し、必要十分な容量が確保できてコスト面にも無理がないサービスを選びましょう。
必要な容量を確認する際、実際に業務に携わっている社員から聞き取ると現場で使いやすいサービスの導入につながりやすくなります。
適切なセキュリティ対策があるか
導入前にはセキュリティ対策の確認も必要です。自社が必要としているセキュリティ機能を備えたサービスを導入しましょう。
例えばファイルを共有したいけれど編集はしてほしくないという場合には、権限を変更できる機能があると便利です。権限を閲覧のみに設定し送信すれば書き換えを制限できます。
ダウンロードの期間や回数・パスワードなどを設定できる機能があれば、第三者が不正にダウンロードした場合の対策が可能です。ファイルの暗号化も情報漏えい対策につながります。
他にもログの取得ができるか、ファイルが自動的に消去されるか、ユーザー登録が必要かなどを確認し、安全にデータを送受信できるサービスを選ぶことが大切です。
現場で使える操作性を備えているか
誰でも簡単に使えるかどうかもチェックポイントです。操作が難しい・デザインが分かりにくく間違えやすいサービスでは、導入しても現場で活用されにくいでしょう。
企業が選定したツールの使いにくさはシャドーIT(組織で認められていないITサービス・機器を勝手に利用すること)にもつながるため、十分な注意が必要です。
送受信の操作のしやすさやヒューマンエラーが起こる頻度などを事前にチェックすることで、現場で使えないという失敗が減ります。検証用アカウントが使えるなら、事前に現場の社員に試してもらい操作性を確認するとよいでしょう。
専門知識なしですぐに扱えるサービスであれば、研修やマニュアル作りにかかる手間の削減も可能です。またユーザーを一括登録する機能があれば導入時の設定がラクにでき、システム管理者の負担を減らすことにもつながります。
手軽に始められるファイル送信サービス
すぐにファイル送信サービスを使い始めたい場合には、手軽に利用し始められるサービスが向いています。中でも機能や要件が自社に合うものを選ぶことが大切です。
ここではファイル送信サービスの中でも、導入時のハードルが低いものを三つ紹介します。
大容量でも無料利用可『firestorage』
無料会員はもちろん未登録でも最大2GBのファイルをアップロードできる『firestorage』は、すぐに利用できるのが特徴のファイル送信サービスです。検証用として利用できる無料のプランもありますが、広告が表示されます。
操作性や使用感をチェックしたら、広告非表示のライト会員・正会員へ登録するとよいでしょう。コストは月額費用のみで初期費用が発生しないため、低コストで始めたい場合に向いています。
有料プランであればダウンロード追跡機能も利用できます。関係者のメールアドレスを設定することで、誰がダウンロードページへアクセスしたか・何回ダウンロードしたかが分かる機能です。
容量無制限の無料オンラインストレージ firestorage
異なるプラットフォームでも利用できる『HULFT-WebConnect』
法人用のファイル送信サービスである『HULFT-WebConnect』は、コードやプラットフォームの異なるファイルでも送れます。さまざまなOSに対応しているため、受信側の環境によらず利用できるのもメリットです。
ファイル暗号化や検証機能はもちろん、『オンメモリ中継』というディスクにデータを残さない機能を備えています。
転送データの上限は100GBで月額3万円から利用でき、24時間サポートの場合、月額料金は3万6000円です。さらに追加料金で機能やライセンス数を増やしカスタマイズできます。
インターネットファイル転送サービス「HULFT-WebConnect」 | セゾン情報システムズ
初心者でも安心な操作性『データ便』
『データ便』はドラッグアンドドロップでアップロードでき、直感的に操作できるのが特長のファイル転送サービスです。これまでツールを使ったことがない人でも簡単に使いこなせるでしょう。
セキュリティ面が充実しているため安心して使えるのもポイントです。暗号化したファイルはパスワードを入力しなければアクセスできないため、誤った相手へ送信した場合にも中身を見られてしまう心配がありません。
受信者本人であることを確認後、受信できるようになるセキュリティ便も利用可能です。ビジネスプランは容量無制限で転送でき、送受信機能を備えても月額500円で利用できます。
データ便 |無料無制限の大容量ファイル送信サービス – トップページ
ファイル送信機能もカバーするオンラインストレージ
ファイル転送にオンラインストレージを利用するのも一つの方法です。強固なセキュリティと豊富な機能を備えており、法人利用に適したサービスもあります。
近年利用する企業が増えてきたオンラインストレージの中でも、ビジネス利用向けのサービスを三つ紹介します。
NTTコミュニケーションズが提供『Bizストレージファイルシェア』
月額1万5000円の1GByteプランから利用できる『Bizストレージファイルシェア』は、NTTコミュニケーションズが提供するオンラインストレージサービスです。
大容量ファイルを安全に送信でき、プロバイダー提供会社ならではのセキュリティ機能で機密情報のやりとりにも安心して使えます。
例えば送信先の制限や上長承認を求める機能は、誤送信や情報流出の予防に効果的です。ログイン制限やウイルスチェックといった、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃への対策も充実しています。
容量の追加・アーカイブ・削除データ復活などのオプションも利用可能です。
NTT Com | Bizストレージ ファイルシェア | NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま
純国産で実績もトップクラス『GigaCC』
純国産のサービスである『GigaCC』は、日本企業の特徴を把握して設計されているため使いやすさ抜群のサービスです。10年以上の運用実績があり国内トップクラスのシェアを誇ります。
スモールスタートで始めたいなら、月額1万2000円から利用できる『GigaCC ASP』が向いています。『GigaCC OKURN』はセキュリティ機能を強化したサービスで、より大きな容量まで扱えるのが特長です。
企業間ファイル共有・転送サービス GigaCC
PC、スマホ問わず快適操作『Fileforce』
法人向けのオンラインストレージである『Fileforce』は、PCはもちろんスマホでも使いやすいWeb UIを搭載しています。ファイル共有用途にとどまらず、社内のファイルサーバやNASとして使える点も魅力です。また、デバイスの種類を問わず直感的で操作しやすい画面構成が特徴です。
ファイルを開かなくても見られるプレビュー機能が備わっているため、端末にダウンロードすることなくスピーディーにファイルを閲覧可能です。
ユーザ数無制限で利用でき、自社の幅広い目的に合わせた使い方ができるのもFileforceならではのメリットです。
Fileforce (ファイルフォース) | 法人向けクラウドストレージ
まとめ
ファイル転送サービスは大容量ファイルを手間なく送信できるサービスです。画像や動画といった容量が大きくなりがちなファイルを日常的に扱う企業で便利に使えます。
導入を検討するときには、容量やセキュリティ・操作性をチェックし、自社に使いやすいものを選びましょう。ファイル転送機能を備えたオンラインストレージも選択肢の一つとして有効です。
紹介したサービスも参考に、自社に必要な機能を備えたサービスを導入しましょう。