ファイル共有のツールやオンラインサービスを導入する際には、セキュリティ対策も同時に考える必要があります。そのため、まずは代表的なセキュリティリスクがどういったものかをチェックしておきましょう。本記事ではリスクを排除するために取りうる対策についても解説します。
ファイル共有におけるセキュリティリスク
社内でも社外でもファイル共有をする際には、さまざまなセキュリティリスクが付きまといます。具体的にどのようなリスクがあるのかを知ることで、効果的な対策へつなげやすくなるでしょう。
不正アクセスや外部からの侵入
まず挙げられるリスクは、不正アクセスといった外部からの侵入です。標的型サーバー攻撃のように、悪意のある第三者により、共有しているファイルへアクセスされる可能性があります。
また、さまざまな手口でログイン情報が盗まれ、侵入されるケースもあります。例えばパスワードリスト攻撃・フィッシング・盗聴といった方法が代表的です。
内部からの情報漏えい
情報漏えいは内部から発生することもあります。例えば不要になったシステムアカウントの放置や個人利用のオンラインサービスを利用する「シャドーIT」の横行などは、情報漏えいのリスクが高まる原因です。
ファイル共有した端末の紛失や盗難をきっかけに情報流出することもあります。悪意がない場合でも、知らず知らずのうちに大切な情報を盗まれているケースに注意しなければいけません。
また社内で正式にアクセス権を付与されている人物が、悪意により情報を盗み出すケースも見られます。付与されている権限を使った不正行為は、防ぐのが非常に困難でもあります。
誤操作による情報漏えい
ヒューマンエラーによる情報漏えいの可能性も考えられます。例えばファイル共有の設定を簡単に変更できるツールを使っている場合、誰でもアクセスできる公開状態になっていたということも実際の被害として報告されています。
メールで共有する場合には、送信先を間違えることで関係者以外にファイルを送ってしまうというミスもあり得ます。誤操作による情報漏えいへの対策として、情報の暗号化や利用端末の制限を検討しましょう。
セキュリティ対策を怠るとどのような被害が生じるか
企業が十分なセキュリティ対策を実施していなかった場合、被害は広範囲にわたります。企業が保管している様々な情報が万が一漏えいしてしまうことで、顧客や取引先といった多岐にわたる関係者に影響が及び、企業活動の継続にかかわる問題に発展する可能性もはらんでいます。
機密情報・個人情報の漏えい
代表的な被害として挙げられるのは、機密情報や個人情報の漏えいです。企業には製品やサービスに関するあらゆる情報が保管されています。蓄積してきた企業の資産とも言える情報が流出すると、営業を続けられなくなる最悪のケースも想定されます。
また、製品やサービスの提供のために保有している、多くの個人情報が盗み取られる可能性があります。特に大量の個人情報を保有している企業は、データを狙いサイバー攻撃されることも。
システムの停止と改変
セキュリティ対策が甘く、不正アクセスを許してしまうと、企業の根幹システムにダメージを与える可能性があります。システムが機能せず停止することも免れません。
また、企業のWebサイトが改変され、コンテンツの書き換えや変更が行われ、サイトの機能が停止してしまいます。
企業への被害はもちろん、ウイルスの埋め込みといった改変により、ユーザーにも被害が及ぶ可能性があります。
社会的信用の低下
外部・内部を問わず情報漏えいが発生すると、社会的信用が低下します。重要な情報を十分管理できていない企業というイメージを持たれ、取引先から取引量を減らされることもあるかもしれません。
今後も情報流出が起こるかもしれない不信感から、新規顧客の獲得が難しいということも考えられます。また企業やブランドのイメージを損ね、それまでの信頼を失うこともあるでしょう。
上場企業の場合、株価の下落により経営に影響が出ます。
ファイル共有を行う際に必要なセキュリティ施策
十分なセキュリティ対策を実施しなかった場合、さまざまな被害を受けることが分かりました。そのような被害を回避するためには、適切なセキュリティ対策の実施が欠かせません。
セキュリティソフトの導入
ウイルスへの対策として、セキュリティソフトは必ずインストールすることが大切です。同時にインストールしたセキュリティソフトを常に最新に保つこともポイントとです。
日々進化しているウイルスに対抗するには、セキュリティソフトのアップデートが欠かせません。更新漏れでウイルスに感染する事態を避けるために、自動更新を設定すると安心です。
セキュリティソフトはさまざまな種類が販売されています。シンプルな機能のものや、ファイアウォール・脆弱性対策などの機能を搭載したものです。
企業の規模やファイル共有の方法により必要な機能は異なります。自社の状況に合わせて適切なソフトを選びましょう。
OSやソフトを常に最新の状態にする
パソコンで使用しているOSやソフトも、アップデートしないまま利用していると、セキュリティの弱点となります。ウイルス感染のリスクが高まります。
セキュリティリスクを回避するためには、常に最新バージョンで利用できるよう、更新を適用することが大切です。更新の通知が表示されたら、情報システム担当者の支持に従って、できるだけ早めにアップデートを実施します。
パスワードの強化
ログイン情報が外部に知られることで不正に侵入されることもあります。そこで第三者に特定されにくいパスワードを設定することが大切です。
アルファベットの大文字・小文字とともに、数字や記号を混ぜた複雑なパスワードを設定すれば、不正侵入されにくくなります。利用するサービスごとに異なるパスワードを設定することも大切です。
パスワード管理の手間をなくすには、シングルサインオン等のパスワード管理のためのツール導入を検討してもよいでしょう。管理上のセキュリティを強化するだけなく、社員が管理するパスワードは一つで済むため、業務の負担になりません。
社内ルールの見直しも行おう
安全にファイル共有を行うためには、セキュリティ体制を整えることが大切です。そのためには社内ルールを整え、社員に浸透させることが欠かせません。
ファイル共有ルールを決める
まず定めるのはファイル共有のルールです。ルールが明確になっており、社員全員がファイルの扱い方を知っていれば、情報漏えいのリスクは低くなります。
例えば社外に持ち出してはいけないファイルがどのようなものか明らかであれば、正しいデータ管理につながるでしょう。
また電子メールの利用やインターネットの閲覧についてもルールを設けると、ウイルス感染といったセキュリティリスクを避けやすくなります。加えて設定したルールは、全社員で共有し実施することが大切です。
社内のセキュリティ意識を高める
社員全員のセキュリティ意識を高めることもポイントです。そのためには3カ月に1回を目安に、セキュリティ教育を実施します。定期的にセキュリティに対する教育を受けることで、自然と意識が高まります。
研修で知識を深めた後は、実際の業務で実施できているか、評価テストも行いましょう。テストで間違えた箇所に対してアフターケアを行うことで、定めたルールの定着が進みやすくなります。
まとめ
ファイル共有する場合にはセキュリティ対策を実施しましょう。対策が不十分なままでは、情報漏えいやシステム停止のリスクが高まります。実際にこれらが起こると、社会的な信用を失う可能性も。
そこでセキュリティソフトの導入や、OS・ソフトのアップデート、複雑なパスワードの作成を実施します。同時にファイル共有に関する社内ルールの設定や、セキュリティ教育の実施も行いましょう。
適切なセキュリティ対策により、安全性に配慮したファイル共有が可能です。