新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により、企業のテレワーク導入が急速に進んでいる。それに伴い、クラウド上でデータを共有したり、管理・運用したりする企業が増加している。
ファイルデータのクラウド管理でよく使われるのが、オンラインストレージサービスだ。個人のファイル保管やファイル共有のための便利ツールとしてよく知られているが、近年はファイルサーバやNASに代わって法人でも全社利用するケースが増えている。
ファイルサーバをクラウド化する企業の動機は大きく分けて2つある。まず、情報システム部門にとってファイル管理はルーティン業務の1つであり、そこに工数を割くべきでない、という考え方が広がりつつある点。現場から「データが見当たらない」「バックアップから戻せない」などと言われ、対応に追われる恐怖もある。それよりも、IT人材はビッグデータやAIの活用など、より戦略的でクリエイティブな仕事をやるべき時代に来ている。
もう1つの動機は、コラボレーションの増加だ。今は他社との協業が重要視される時代となっており、外部とデータを共有する機会も増えている。その際、社内にファイルサーバを置きながら、オンラインストレージや共有ソフトを併用して他社の人間とデータ共有するケースも多いが、セキュリティやバージョン管理の観点から決してスマートな運用とはいえない。こうした背景から「社内外で安全に情報共有ができる環境を実現したい」というニーズが徐々に増えてきている。
しかし、コロナ禍をきっかけに事業継続のために急いで全社、または一部でテレワークを導入した結果、情報持ち出しのルールを緩めざるを得なくなったり、メンバー間で最新バージョンの共有ができなくなったりと、セキュリティや運用上の課題は多い。本記事ではファイル管理クラウドサービス「Fileforce(ファイルフォース)」の導入事例や、ファイルフォースCEOサルキシャン・アラム氏、マーケティングマネジャーの佐々木裕子氏両名のコメントをもとに、これからの企業が採るべきファイル管理方法を探る。
会社・組織で使いやすいファイル管理サービスとは?
Fileforceは従来のファイルサーバやNASに代わり、会社や組織単位で使える新世代のファイル管理クラウドサービスだ。分かりやすくストレスのない操作性、組織で管理しやすい中央集中管理のコンセプトと柔軟な権限管理を特長としている。昨今は外資SaaSも多いが、Fileforceは日本企業のニーズに応えながら開発を進めてきた。
「高セキュアで信頼性が高く、安全性へ強いこだわりを持つFileforceの特徴は、私たちが日本企業のニーズに寄り添い、機能やサービスに反映してきた国産メーカーの強みでもあります」(アラム氏)
前述の通り、最近は企業でもオンラインストレージでファイル管理するケースが増えている。しかし、それらの多くはもともと個人向けツールとして始まったものであり、個人主義の使い方に走りやすいのが欠点だ。特に、細かな権限設定ができないため、移行するにしても従来の社内サーバ内のフォルダ構成自体を変えねばならず、結果的に大きく運用を変えることになり、管理者に運用コストがかかってしまう。
その点、Fileforceははじめから法人での利用を意識して設計されているため、そもそもの思想がまったく異なる。最大の違いは権限設定が柔軟なフォルダ構成だ。例えば、入れ子構造のフォルダに権限を与えたり、階層が下のフォルダでも上階層のフォルダと異なる権限を付与したりできる。
また、権限設定は情報へのアクセスのセキュリティを守るための手段としてだけではなく、情報が整理整頓された状態を維持するための役割も果たす。一例として、「フォルダ直下へのファイル保存禁止」といった、ユーザーに守ってほしい運用ルールをシステム側で強制することも可能だ。
ポリシーを変えずに、従来のファイルサーバの権限とフォルダ構成をそのまま再現できるため、Fileforce導入後でもわざわざ運用ルールを変える必要がない。管理者やユーザーにとっても、従来の発想をもって直感的に運用できるので負担の軽減につながる。また、組織形態の変化に合わせて権限を柔軟に構成できるため、中長期的に見ても会社全体でメリットが大きい。アラム氏によると、権限設定が柔軟なフォルダ構成が可能で管理・監査に必要な機能が充実していることから、Fileforceはセキュリティ規制の厳しい業界・業種にも支持されているのだという。
また、会社の中はITリテラシーが高い人材ばかりではない。ファイル管理がクラウド化されたからといって、新しいルールや使い方を全員に覚えさせるのは現場にとって大きな負担となる。人為ミスによる情報漏えいのリスクも高まりかねない。
その点もFileforceなら安心だ。Fileforce Driveのアプリケーションを使えば、従来のファイルサーバと同様に、エクスプローラにドライブとしてマウントしてファイルシステムにアクセスできるため、使い方を変えずにスムーズに移行できる。分かりやすいアイコンや権限に合わせてフォルダ・ファイルを表示する機能、右クリックで簡単に共有用のURLを発行する機能なども備える。クラウドサービスにありがちなアップロード、ダウンロードの待ち時間というストレスもない。日本企業らしい、かゆいところに手の届く細かな機能によって、現場の作業効率は向上するはずだ。また、PCはもちろんスマートフォンやタブレットのブラウザからアクセスできるユーザーインタフェースも備えている。
管理者にとってもFileforceは全体の把握がしやすく扱いやすい。フォルダ構成を一覧でチェックできる画面、フォルダロールの編集画面など、管理画面が分かりやすいデザインになっているからだ。IT部門がなく、総務などがファイル管理を兼務している企業にとっても、この点は大きなメリットといえる。
他社も含めたファイル共有が安全・スムーズに行える運用を構築
他社とのコラボレーションが多い企業ならではの悩みといえば、ファイル共有の難しさだ。今まではメールでのファイル添付や、アップローダーを使った共有など、一方通行でのやりとりで事足りた。しかし、数社を巻き込んで1つのプロジェクトを進めるケースが増えた今では、クラウド上で企業の垣根を超えてつながる環境を構築しなければならない。
Fileforceは「プロジェクトフォルダ」という所定の共有用フォルダへ外部の担当者を招待できるだけでなく、ユーザーごとの権限も、「参照のみ」「編集可」「アップロードのみ」など細かく設定できる。また、相手やプロジェクトの内容によってそれらを柔軟に使い分けられるようになっている。
また、コラボレーションにおけるFileforceの大きなメリットして、1社が契約すれば招待された他社メンバーがアカウントを作る必要がない点が挙げられる。個人向けのオンラインストレージでは、招待されたメンバーも個人ごとにアカウント作成が必要だったり、複数の企業から招待されると同じアカウント上に表示されたりと、ミスが起こりやすい。一方、Fileforceなら招待を受けた人が招待メールのリンクをクリックするだけで、企業間で専用の「プロジェクトフォルダ」にアクセスできるため、社外メンバーを招待する心理的ハードルが下がり、コラボレーションの活性化を図れる。
「プロジェクトフォルダ」は利便性が高いだけでなく、高セキュアな環境にも配慮している。前述のユーザー毎の権限設定に加え、複数企業と共有する場合はオーナー以外の他社間での参照、ダウンロードを制限するということも可能だ。佐々木氏は「人がミスしえない環境を作るのが重要」と話す。
Fileforceを2万以上のアカウントで利用する某大手メーカーでは、外部との共有にあたり承認プロセスを組んでおり、外部にファイルを共有するときは上長の承認が必須となっている。Fileforce内のファイルをメールで他社に送っても、それがいったん上長に届き、承認してもらう必要があるのだ。「社内ドメインなら承認不要」「フリーメール宛なら送信禁止」など、ポリシーの定義も細かく設定できる。
「共有のしやすさは大切ですが、一定のコントロールは必要です。実はデータ漏えいは約7割が“うっかり”による人為的ミスで、外部からの攻撃のほうが少数だといわれています。導入企業側の自己責任ではなく、サービス提供側としてもできることは支援していきたいと考えています」(佐々木氏)
テレワーク時代ならではのセキュリティ問題を解決
クラウドでのファイル管理において、企業が最も気を遣うのはセキュリティだろう。コロナ禍で急きょテレワーク導入に踏み切った企業の中には、通常では絶対に許されないが、テレワーク対応のため一時的にルールを緩めていることもあるという。
例えば、社員個人が普段使っているオンラインストレージにファイルをコピーして自宅で作業する、在宅勤務の社員がオフィスに出社している社員に依頼し、自宅からアクセスできないファイルをメール添付で送ってもらう、などだ。持ち出し禁止のルールが総崩れした危険な状態である。
「日本では事業規模が大きくても、新しい働き方に適したICT導入や社内の運用プロセスが規模に追い付いていない企業が少なくありません。突貫工事で外部からのアクセスを許可すると脆弱性が生まれてしまいます。テレワーク向けの早急な環境構築が必要です」(アラム氏)
その点、Fileforceは金融グループ、製薬会社、ゼネコン、メーカーなど、セキュリティに対して厳しい規制やルールを持つ企業でも多数導入されている実績がある。
中小企業を中心としたM&A仲介や投資を行う信金キャピタルは、2013年よりFileforceを導入。社内でファイルサーバとファイル管理システムを同一システム上に統合したことにより、社内の情報の集約化や共有、クラウド上におけるファイル保管の運用の徹底が可能となった。
これは社内の情報一元化による業務効率の向上だけではなく、各社員が社外へ持ち出すノートPC紛失時の情報漏えいリスクへの対策にもつながった。Fileforceは社員がクラウド上のファイルを参照・編集しても、個人のPCには暗号化されたキャッシュしか残さない。個人PCのローカルディスクに資料を保管しないという運用も徹底されるようになったという。
監査機能も充実している。仮に不正アクセスやデータ盗難などのセキュリティインシデントが起きた場合、2つの主な監査機能を使って迅速に原因を究明できるようになっている。
その1つが、ユーザーのFileforce上の全ての操作を記録する機能だ。Fileforceでは、管理者が直近90日分のログをビジュアルで分かりやすく閲覧できるデザインとなっている。期間指定などのフィルタリングを活用すれば、迅速に目的のログへたどり着くことができる。
もちろん、操作ログはクラウド上で記録されるため改変不可能だ。1つ1つログをチェックする手間が省けるため、重大な事故だけでなく、日頃のうっかり操作による事件事故の原因も簡単に調べられるようになっている。
もう1つの機能が管理者ログだ。ユーザーだけでなく、管理者の操作も全て改変不可能な形でクラウド上に記録されており、不適切な権限設定がされた場合などの原因究明に役立つ。こうした機能がシステム側にきちんと備わっていれば、セキュリティに厳しい企業でも有効な監査証跡となる。
また、Fileforceはデータもアプリケーションも国内で開発しているため、規制に対応しやすいという特長がある。サービスの永続性も安心だ。Fileforceならより中長期的な運用を見据えた導入が実現できるだろう。
アフターコロナの世界では働き方が大きく変わると予想されている。仮にコロナが完全に収束したとしても、コロナ以前の働き方には戻らないだろう。さらに、こういった事象が再びいつ発生するかは分からない。安全なテレワーク環境整備の必要性を改めて認識した今回の経験とそこから生まれた課題を生かし、今のうちに次の不測の事態に備えた働き方の設計が欠かせない。自然災害の多い日本が拠点ならなおさらだ。
「新しい働き方に適したオンプレミスのファイルサーバやNASに代わる仕組みを考えるときに、個人向けのオンラインストレージを流用・併用するのではなく、企業向けに開発された、全社統一のファイル管理システムを使うフェーズがすでに来ています。テレワークでは、メンバーが離れた場所にいてオフィス内のように気軽に声を掛け合いながら業務ができなくなる分、企業ミッションやプロジェクトのゴールと同様に、ファイル管理上もメンバー全員に“同じ景色”(フォルダ構成)が見えてかつ、常に情報が整理されていることが重要です。ファイル管理システムは毎日、かつ長期的に使うものだからこそ、その基盤を変えたときに生まれる細かなずれや違いがじわじわと業務に影響してくるのです」(アラム氏)
コンテンツや情報がファイルの形で企業内、パートナー、顧客間と安全スムーズに共有され活用されることで、組織横断でさらなる価値が生まれる。その効果は業務効率と生産性向上に大きく寄与し、企業全体のパフォーマンス強化につながっていく。情報が企業の重要な業務資源の1つであることは間違いない。
「私たちは、アフターコロナ/ウィズコロナの新しい時代にテクノロジーで情報活用を革新させ、企業と働く人たちが本来のポテンシャルを発揮するためのデジタルプラットフォームを提供し、どんな環境変化にも負けないレジリエントな組織づくりに貢献していくことをミッションと考えています」(アラム氏)
テレワーク導入においては働く場所に関わらず、業務の資源であるファイルにいつでも正しい共通の手段でアクセスと共有ができるよう整理しておくことが重要だ。その環境をテクノロジーで実現できれば、人間は管理業務に追われる必要がなくなり、よりクリエイティブな仕事に専念できるようになる。自然の脅威を乗り越え、事業継続はもちろん、さらなる成長にむけたDXを加速させるために、新時代のファイル管理について本気で考えるタイミングが今、到来している。
転載元:https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2006/04/news001.html