テレワークを実施するときには、ファイル共有しやすい環境づくりが欠かせません。そのために利用可能なファイルサーバーには、どのような特徴があるのでしょうか?メリット・デメリットやクラウドとの違いも見ていきましょう。
ファイルサーバーの定義と導入する目的
社内に設置するファイルサーバーとは、どのような機器なのでしょうか?まずはファイルサーバーの特徴と、導入するとできることを紹介します。
ファイルサーバーとは
社内ネットワークであるLANを用い、ネットワーク内のPCからファイルの保存や共有をする仕組みに使われるコンピューターのことをファイルサーバーと言います。
厳格な定義はありませんが、社内のファイルを一元管理する際に用いるサーバーを指すことが多い言葉です。
ファイルサーバーの目的
ファイルサーバーを用いると『ファイル共有』と『バックアップ』に利用できます。これらの機能により、手間なくファイルを扱えるのです。
例えばファイルの管理を個々のデバイス上で行っていると、操作ミスやデバイスの不具合によりファイルが消失するかもしれません。ファイルサーバーに格納されていれば、大切なファイルの消失を防げます。
またテレワークでは頻繁にファイル共有を行うことがありますが、そのようなときにも社外から安全にファイルサーバーにアクセスできれば、アクセス権限の範囲で簡単にフォルダ内の必要なファイルを共有することが可能です。
画像や動画といった大容量ファイルを扱う場合には、デバイス内の保存容量を節約するためにファイルサーバーを利用する使い方もできます。
ファイルサーバーを利用するメリットとデメリット
主にファイル共有とバックアップのために利用されるファイルサーバーには、メリットとデメリットがあります。代表的な機能と併せて知っておくことで、導入を検討する際の参考にしましょう。
ファイルサーバーを利用するメリット
まず挙げられるメリットは、ファイル保管や共有を簡単かつ安全にできることです。これまで社内でもファイル共有のためにメール添付を利用していた場合は、都度ファイルを添付し送信する手間が掛かります。
また、ファイルサイズによっては1度に送信できないこともあるため、複数回に分けて送らなければいけないこともありえます。ファイルサーバーであればファイルを格納するだけで共有でき、煩わしい手間が少なくなります。
閲覧や編集の権限を設定できるため、メールで送信するよりも安全に受け渡しできるのもポイントと言えます。
加えてカスタマイズ性が高い点もメリットです。自社のセキュリティ要件に合わせた対策の実施や、ハードディスクの増設などに柔軟に対応できます。
ファイルサーバーを利用するデメリット
デメリットとして挙げられるのは、ファイルサーバーに障害が発生すると業務がストップする可能性がある点です。またメンバー全員で共有して使うため、アクセス権限はもちろん、新規のフォルダ作成やフォルダ命名規則など、取り扱いのルールを定める必要もあります。
これらに対応するために、ファイルサーバーの管理者を新たに置いたりバックアップやリストア手順を決めておく必要もあるでしょう。必要なスキルを持った管理者を配置することが企業のコスト負担につながることもあります。
またファイルサーバーの導入には機器の購入費用やシステム構築のための初期費用も必要です。バックアップ機器やテレワークなどで社外からアクセスするためにはVPNの敷設や自社内に保管する場合にはセキュリテイやBCP対策などが必要になるなど、サーバー費用以外にも初期費用と保守・維持管理、バックアップの費用が発生します。
ファイルサーバーとクラウドの違い
ファイルサーバーと同じようにファイル共有やバックアップに利用できるサービスに、クラウドストレージがあります。ファイルサーバーとクラウドストレージではどのような違いがあるのでしょうか?
オンラインもしくはオフラインでの共有
クラウドストレージはその名の通り、インターネット上のクラウドに設置されているデータ保存領域です。オンラインとなりますので、利用するときはインターネットにつながる端末でログイン情報を入力しアクセスします。社内の他クラウドサービスと併せてシングルサインオンに対応しているサービスもあります。
一方、ファイルサーバーは社内ネットワークを通じて利用するため、社内ネットワークに接続できる環境であれば都度ログインしなくともアクセスできます。
サーバーの管理者が異なる
管理者が異なる点も両者の違いです。社内に設置するファイルサーバーの管理は、自社内の担当者が行います。ICT担当者が管理者を務めることが多いでしょう。
クラウドストレージのサーバーはサービスを提供しているベンダーの管理下にあります。そのため自社で管理する必要はありません。障害発生時の対応や保守管理もベンダー側が実施するため、管理の手間がなくなります。
尚、クラウドストレージも設定やユーザーは社内の管理者が行うため、適切な運用を監視したり利用状況を把握することが可能です。セキュリティや管理機能が充実していて使いやすいサービスを選ぶことが重要です。
テレワーク環境ではどちらがおすすめ?
テレワークを実施するときのファイル共有方法として選ぶには、ファイルサーバーとクラウドストレージのどちらが適しているのでしょうか?自社が重視する機能に合わせて選べるよう、ポイントを紹介します。
社外からの接続はクラウドサービスが便利。但し、アクセス権限機能を確認
ファイル共有する機能にカスタマイズ性の高さを求めるなら、ファイルサーバーが向いています。社内に機器を設置しシステムを構築していくため、自社に必要な機能を過不足なく備えられるからです。セキュリティ面においても、ユーザー管理やアクセスログ管理といった機能を必要に応じて追加できます。但し、テレワークで社外からファイルを参照したり保管する際にはVPN敷設やセキュリテイ対策を行う必要があり、コストがかかります。
クラウドストレージサービスは、インタネットがあれば社外からもログインができます。スマートフォンを使った多重認証ができるサービスもあります。運用の柔軟性という意味では、クラウドストレージサービスの中には、アクセス権限が数パターンからしか選べない、深い階層のフォルダにだけ権限を厳しく絞ることができないものなど、ファイルサーバーに比べて柔軟性が低いものがあります。組織や業務ごとに整理されたファイル管理を行いたい場合には、細かくアクセス権限を付与できるサービスを選ぶとよいでしょう。
ファイルサーバや柔軟なアクセス権限を付与できるクラウドストレージであれば、自社のセキュリティポリシーに合致した対策ができるため、安心して導入可能です。
コストや操作性はクラウドサービス
コスト面では、企業の考え方にもよりますが、初期費用や導入後の運用・維持管理のコストや人的負担を考えるとクラウドサービスを選ぶのがおすすめです。ファイルサーバは保管最大容量で構築する必要がありますが、クラウドサービスは必要なタイミングで必要な容量を増やせるサービスが多いため、合理的でトータルでは、オンプレミスのファイルサーバーよりも低コストでそして短期間で導入できるメリットもあります。
月額のランニングコストは必要となりますが、維持管理も含めて運用のプロに任せられるため、専門知識をもつ管理者を置くための人件費と比較すると大幅な費用削減になるケースもあるのです。
また操作性の高さで選ぶ場合にも、クラウドサービスが向いています。PCはもちろんスマホやタプレットからもアクセスできますし、社内・社外を問わず同じようにアクセス可能で、多くのクラウドサービスにはファイル保管以外に社外とのファイル共有を効率的かつ安全に行える機能を持っています。最近は、日本の多くの会社で使われているZipファイルに添付ファイルをまとめて暗号化し、パスワードを別送する方法、通称PPAPがかかる手間の割に安全性が担保されず、かつ送付先企業のセキュリテイチェックをすり抜ける方法として課題になっていますが、ファイル保管の手段と別にファイル共有や転送の仕組みやサービスを契約しなくとも、クラウドストレージの導入で社外とのファイル共有の課題も解決できることはメリットのひとつと言えるでしょう。
まとめ
テレワークを実施するときには、ファイルの保管・管理という目的だけではなく、社内外とのファイルを安全かつ効率的に共有の仕組みが必要です。
ファイルサーバーは、社内に機器を設置し社内ネットワークに接続して利用します。
ファイルをファイルサーバーへ格納すれば、そのままメンバーと共有でき、データのバックアップとしても使えばPCが故障した際には便利です。しかし、社外のメンバーがアクセスするためにはVPN敷設等が必要になり、コストや保守のための人的リソースも必要です。
同じようにファイルの保管や共有方法として利用できるものがクラウドストレージです。クラウドストレージはインターネット経由でログインして使用します。Webブラウザからアクセスするサービスが多いですが、Windowsのエクスプローラーと同じ使い方でファイルにアクセスできるサービスもありますので使い勝手やクラウドへのアップロード、ダウンロードがスムーズかつストレスなく行えるかも大切なチェックポイントです。
また、クラウドストレージには、社外メンバーと安全にファイル共有できる機能が含まれているものが多いので、ファイルサーバーには無い便利機能として活用することをお勧めします。ファイル共有だけでなく特定フォルダを共有してメンバー間で安全に相互でやりとりできるサービスもおすすめです。
運用・セキュリティ面では、暗号化やウイルスチェック機能があるかはもちろん、アクセス権限が柔軟に付与できるかも重要な確認ポイントです。
クラウドストレージはシステムやデータ保全がサービス提供ベンダーの管理下となるため、データ保管先が日本か海外か、またベンダーのサポートが国内にあるかだけでなく、開発拠点や海外を含め外部委託があるかも確認しておくと安心です。
自社の運用に柔軟に対応できる仕組みを導入して社内外問わず、安全に効率的に業務を行える環境を整備しましょう。