テレワークを運用していると、コミュニケーション面で多くの課題が発生するでしょう。課題の解決を図るためには、ツールの導入・ルールの策定・テレワーク従業員の意識改革が必要です。発生しやすい課題と解決方法を紹介します。
テレワーク導入はコミュニケーションで課題が生じる
社員間に情報がうまく伝わらなければ、業務の効率性が下がり、生産性の低下を招いてしまうでしょう。テレワーク運用中に生じやすい、コミュニケーション上の主な課題を紹介します。
誤解が生じやすい
テレワークにおける連絡は、メールやチャットなどテキストでのやり取りが基本です。表情の変化や仕草などを伴う会話と異なり、相手が受け取る情報量が圧倒的に少ないため、誤解が生じやすくなります。
細かいニュアンスが伝わりにくいこともポイントです。分かってくれるだろうと思い込んだ行間のニュアンスが伝わらず、誤解を招くことがあります。
誤解が生じるのを防ぐために事細かく説明すると、文章が長くなってしまい、かえって読みにくい文章になるでしょう。手間や時間がかかることにもなりかねません。
チャット機能を使いこなせない
テレワークで導入されることの多いビジネスチャットツールは、さまざまな面からコミュニケーション課題の解消に役立つ便利なツールです。
しかし、ITに不慣れな人は、チャット機能を使いこなせないことにストレスを感じがちです。
例えば、会議室でホワイトボードを使ったプレゼンに慣れている人は、チャットツールで資料データを共有しながら説明を行う操作やメンバーから矢継ぎ早にコメントが投稿される事態に戸惑いを覚え、孤立してしまうかもしれません。
チャット機能に手間取って作業が遅くなると、企業の生産性も下がってしまいます。ツールの使用方法をマニュアル化したり、講習会を開催したりするなどの対策が必要です。
タスクの進捗が管理しにくい
コミュニケーション不足により、上司・部下の間でお互いの様子が分からなければ、タスクの進捗を管理・確認しにくくなります。
プロジェクトの進捗状況が把握できないことにより、開発スピードに遅れが生じ、生産性の低下を招いてしまうでしょう。
プロジェクト管理の不徹底により、従業員のモチベーションが低下するリスクもあります。タスクの進捗状況が分からず、やるべきことや目指すゴールが不明確な状態では、従業員のやる気も上がりにくいでしょう。
チームワークが悪化することも
これまでに同じオフィス内で良好なチームワークを築けていた場合は、テレワークを導入することでチームワークの悪化を招くリスクがあります。
メールやチャットなど、テキストでのやり取りが中心のコミュニケーションでは、意思の疎通を図りにくく、誤解を招くことによりチームワークを悪化させることがあるでしょう。
これは、文字だけのやり取りでは表現に冷たさを感じやすいからです。言葉の使い方や書き方に工夫を凝らさなければ、意図せず相手に冷淡なイメージを与えやすくなります。
テレワークでは相手の状況が分かりにくいため、気軽に声を掛けにくい雰囲気になりがちです。雑談が減ると孤独感が増し、チームワークが悪化する恐れがあるでしょう。
コミュニケーションの課題を改善するコツ
テレワークで発生し得るコミュニケーション課題を解決するために、意識しておきたいポイントを紹介します。企業と従業員の双方に、対策や意識付けが必要です。
タスクの可視化と目標の設定
タスクの進捗管理が不明瞭になることで起こり得る課題に対しては、タスクの可視化と目標の設定を意識することが重要です。
プロジェクト管理ツールなどを活用し、タスクを可視化できれば、テレワーク従業員が自分のやるべきことをしっかりと確認できるため、モチベーションを維持しやすくなります。
成果物や目標を明確化することも大切です。自分が向かうべきゴールを従業員が認識できていれば、不安を感じることなく業務に邁進してもらえるでしょう。
テレワークに向いたプロジェクト管理ツールでは、各人のスケジュールや業務全体の進捗状況・課題を共有できます。
タスク・目標・進捗状況などを全員で共有できていれば、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。
早めのレスポンスを心掛ける
テレワークに不可欠なビジネスチャットツールは、メールでのやり取りに比べ、よりスピード感のあるやり取りができることに大きな特徴があります。
この特徴を最大限に生かすためには、いつでもチャットを確認できる環境を整えた上で、受けたメッセージに対し早めのレスポンスを心掛けることが重要です。
スタンプなどの利用ルールなどもあらかじめ決めておき、「OK」や「ありがとう」「Good!」という意思表示が気軽にできるようにしておくと便利です。
メールより気軽なやり取りが可能なチャットでは、単なる連絡事項以外に、すぐ回答が欲しい質問なども頻繁に寄せられるでしょう。
特に、テレワーク従業員から質問を受けた場合、回答しなければ作業を進められない状況に陥っていることも考えられます。素早い返信を常に意識しておくことが大切です。
相手を気遣ったチャットをする
メールのようにかしこまった文体ではなく、比較的フランクな文章でやり取りされることの多いチャットは、配慮に欠けた表現になりやすい欠点があります。
メッセージが相手に与える印象を考慮し、相手を気遣った内容の文章を意識する必要があるでしょう。
また、メッセージを受け取ったことに気付いていながら、すぐに返事を送れない状況であるなら、その旨一言でも返事しておく気遣いも大事です。
メッセージを送る側も、常に迅速な反応を期待していると、なかなか返事がこない場合に不安や焦りの気持ちが生じてしまいます。
すぐに返事ができない場合があることを頭に入れておけば、気をもむことなく業務に専念できるでしょう。
小まめに状況の共有を行う
テレワークでは、自分以外の人がどのような状況なのか分かりにくいことから、さまざまな問題が発生します。
従業員が自分の状況を小まめに報告できる共有スペースを設ければ、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。ツールの離着席のステータス表示や状況報告できるグループチャットを作成したり、カレンダーツールを共有したりすることで、誰でもメッセージを投稿・閲覧できる場を設けられます。
仕事ができない時間帯や、業務過多によるヘルプ依頼など、積極的に従業員自身の状況を書き込めるようにすれば、業務をより円滑に進められるでしょう。
ビデオでのコミュニケーションも増やす
テレワークではチャットだけでなく、ビデオでのコミュニケーションも積極的に取るようにしましょう。
より正確にメッセージを伝えたい場合や、相手の意志を確認したい事項がいくつもある場合は、1対1のビデオ通話が効果的です。
ビデオでのコミュニケーションなら、5~10分程度の会話でも、十分な意思疎通を図れます。
モチベーションが低そうな従業員や、業務に不安を抱えているように見える従業員に対しても、ビデオを使用した面談は功を奏するでしょう。
コミュニケーションのルールを作るのも一つの手段
コミュニケーションの課題は、ツールの導入で全てを解決できるわけではありません。企業と従業員の双方が統一した意識を持つことで、より多くの課題を解決できるでしょう。
社内全体で統一した意識を持つ
テレワークの運用にあたり、企業側には勤怠管理や業務指示に関する課題が発生しやすく、従業員はコミュニケーションや評価体制についての不安を抱えやすくなります。
これらの課題や不安を解消するためには、社内全体で統一したルールを策定し、全員で共有することが重要です。
コミュニケーションに関するルールとしては、チャットをやり取りする時間帯を決めておくことや、緊急の場合は電話を掛けるようにすることなどが挙げられます。
このような統一ルールを設けておくことで、返事がこないことへの不安感といったようなストレスを軽減できるでしょう。
まとめ
テレワークを導入すると、コミュニケーション面で多くの課題が生じやすくなります。課題を克服できずにいると、誤解が生じやすくなったりチームワークが悪化したりすることもあるでしょう。
課題の改善に役立つコミュニケーションツールの導入と併せて、社内全体で統一したルールを策定することも重要です。