テレワークを初めて導入するなかで、思いもよらない問題が発生することもあるでしょう。導入後に業務効率を維持するためには、起こり得る課題の種類を知り、対策を練っておくことが重要です。テレワークで生じる課題を3分野に分けて解説します。
テレワーク導入後にも課題対策が必要
テレワークにはメリットがある一方で、さまざまな問題が発生する可能性も否めません。導入を検討する際は、運用後の課題についても知り、対策を講じておく必要があります。
テレワークを導入後に中止している企業も
新型コロナウイルスの感染拡大を機に、多くの企業がテレワークを導入しました。しかし、東京商工会議所の「テレワークの実施状況に関するアンケート」(2020年11月4日)において、テレワークを実施していた東京都内企業の約3割近くは、現在はテレワークを中止していることが、いくつかの調査結果で明らかになっています。 中止した企業の約半数は「今後の実施予定はない」と回答するなど、テレワークが定着しにくい実態が浮き彫りとなった形です。 テレワークを続けられなかった企業には、何らかの課題が発生しています。企業の担当者は、導入後に起こり得る問題を知り、課題対策を練っておくことが重要です。
業務上の課題
テレワークで発生し得る、業務上の主な課題を紹介します。それぞれの解決策も併せてチェックしましょう。
勤怠管理が不透明
テレワークでは、従業員が勤務する様子を監視しにくいため、真面目に作業しているか分かりにくいという課題が発生します。 残業や深夜勤務が増加しやすいことも課題の一つです。労働時間の適正把握が法律で義務化されており、テレワークでも客観的な方法で労働時間の状況把握に努めなければなりません。 これらの問題を改善する方法としては、勤怠管理ツールの導入が有効です。労働時間の適正把握や従業員の不正防止に対し、一定の効果を発揮します。 勤怠管理に不安がある場合は、厚生労働省が公表している企業向けガイドラインも参考にするとよいでしょう。
従業員のコミュニケーションが図れず生産性が下がる
テレワークでは従業員同士の距離が離れているため、コミュニケーションが不足しがちです。 テキストでのやり取りが中心となる状況では、物事を的確に伝えることが困難になりやすく、意図がうまく伝わらないことも多いでしょう。 コミュニケーション不足は業務効率を下げ、生産性の低下を招く原因となります。テレワークの導入にあたっては、コミュニケーション不足への対策を最優先で講じることが重要です。 ビジネスシーンでの利用に特化したチャットツールを導入すれば、コミュニケーション不足に関する多くの課題を解決できるでしょう。
仕事の進捗状況などが追えない
テレワーク勤務者は、基本的に1人で作業することが多いため、モチベーションが低下しがちです。 オンとオフの切り替えが難しいことや、上司や同僚の目を気にせずに済むなどの理由で、やる気が出ないまま業務に取り組む従業員もいるでしょう。 各人がきちんと仕事をしているか、企業には仕事の進捗状況の的確な把握が求められます。作業の様子が分からなくても、予定通り仕事が済んでいることを確認できれば、テレワークがうまくいっていると判断できます。 進捗状況を的確に把握するためには、プロジェクト管理ツールの導入が効果的です。チームのタスクを可視化できるため、プロジェクトの協業化や効率化を図れます。
組織・チームとしての意識が低下
従業員がオフィスに集まって作業する働き方と異なり、テレワークではそれぞれが別の場所で働くことになるため、チーム意識が低下しやすくなります。 組織への帰属意識が低下すると、士気が下がったりコニュニケーションがうまくいかなくなったりすることから、生産性の低下を招いてしまうでしょう。 チーム意識を高いレベルで確保するためには、定期的なミーティングや会議が欠かせません。雑談の機会を積極的に設けることも、チームワークの向上につながりやすくなります。 コニュニケーションツールやWeb会議ツールを活用し、チームの一体感を維持できる環境を整えておくことが重要です。
会議をビデオ会議で行う必要がある
テレワークを導入している企業のなかには、会議を実施する場合のみ、出社を義務付けているところがあります。 しかし、何らかの事情で出社できないテレワーク従業員がいる場合は、会議をビデオ会議で実施しなければならないでしょう。 ビデオ会議を行う場合は、Web会議システムの構築が必須です。Web会議ツールを導入すれば、資料データを共有しながら、音声や映像をリアルタイムで送受信できます。 ただし、環境が適切に整備されていなければ、会議がうまくいかずに業務効率を落としてしまうでしょう。システムの構築には、端末やネットワークなどの適切な環境整備が必要です。
人事評価が難しい
『勤務態度が見えない』『成果へのプロセスを把握しにくい』『勤務時間を正確に把握できない』などの理由から、テレワークでは人事評価が困難になりがちです。 人事評価に関する課題を解消するためには、テレワークを想定した評価基準を、会社の評価制度に加える必要があります。 成果物を基準に評価するなど、評価項目を明確化するのが効果的です。従業員によるばらつきを防ぐために、評価方法を統一する必要もあるでしょう。
セキュリティの課題
テレワークを運用する上で、セキュリティリスクへの対策は不可欠です。会社の信用を落としかねない、情報漏洩のリスクについて解説します。
情報漏洩のリスクがある
主にインターネット回線を利用して運用されるテレワークでは、悪意ある第三者から不正アクセスを受けるリスクにさらされています。 会社の機密情報や個人情報が抜き取られ、情報漏洩を引き起こしてしまうと、取引先や顧客からの信用を失ったり、企業イメージを損ねたりすることになりかねません。 経済的な損失につながる可能性があるほか、賠償被害や業務停止に発展するケースもあるでしょう。 セキュリティ対策には、ルールの策定とツールの導入が必須です。総務省が公表するガイドラインも活用し、リスクに対する不安を払拭しておきましょう。
環境の課題
ネット通信や従業員の体調管理など、環境の課題への対策も重要です。起こり得る問題と対策を紹介します。
ネット通信が安定してない
ITツールを利用しながらテレワークを円滑に運用するためには、安定した通信環境が不可欠です。 在宅勤務で自宅のネット回線を利用する場合、プライベートでは快適に利用できていた通信環境でも、テレワークのITツールには追い付かない可能性があります。 ネット通信が安定していなければ、Web会議中に接続が切れたり、作業中に画面が固まってしまったりと、業務効率を下げる事態になりかねません。 通信環境が悪い従業員には、環境整備のための費用を負担するなど、企業としても何らかの対策を検討する必要があるでしょう。
生活習慣病になるリスクもある
テレワーク勤務者は、会社に通勤する必要がなくなるため、歩く距離が減り運動不足につながる可能性があります。 また、慣れない環境の中で、長時間同じ姿勢で作業していると、肉体的な疲労を感じやすくなるでしょう。 運動不足や蓄積疲労の影響により、生活習慣病になるリスクもあります。厚生労働省のガイドラインも参考にしながら、従業員に対し運動不足への注意喚起を促しましょう。
まとめ
テレワークを進めていると、業務・セキュリティ・環境のそれぞれで課題が発生します。どのような課題が起こり得るのかを知った上で、事前に有効な対策を講じておくことが重要です。