テレワークの導入を検討するにあたり、リモートワークとの違いが分からずに悩んでいる担当者もいるのではないでしょうか。双方の違いを解説し、テレワークのメリット・デメリットや、テレワークに向いている職種を紹介します。
テレワークとリモートワークの概要
遠隔地で働くことを意味する言葉として、テレワークとリモートワークがあります。まずは、それぞれの意味を押さえておきましょう。
離れた場所で働く『テレワーク』
厚生労働省では、テレワークを『情報通信技術(ICT)を活用した、場所や時間に縛られない柔軟な働き方』と定義付けています。 総務省や日本テレワーク協会でも、同じような内容の説明でテレワークの意味を示しています。 テレワーク(telework)の『テレ(tele)』は『離れた場所で』、『ワーク(work)』は『仕事』を意味する言葉です。 国が推奨する働き方改革の切り札として、テレワークの導入を推進するさまざまな取り組みが、総務省を中心に実施されています。
遠隔地での働き方を表す『リモートワーク』
リモートワーク(remotework)の『リモート(remote)』とは、『離れた・遠い』という意味を表す言葉です。 一般的にリモートワークという場合は、会社から離れた遠隔地での働き方を表す言葉として使われます。 リモートワークには、テレワークのような定義がありません。会社などの拠点があり、そこから離れた場所で業務に取り組む働き方は、全てリモートワークに該当します。
テレワークとリモートワークの違い
定義の有無を除けば、テレワークとリモートワークの意味に大きな違いはありません。一般的には、テレワークの方がよく使われています。
定義があるかどうかの違い
前述のとおり、テレワークには『情報通信技術を活用した、場所や時間を有効活用できる柔軟な働き方』という定義があります。 また、働き方の形態も、働く場所によって『在宅勤務』『モバイルワーク』『サテライトオフィス』の三つに大きく分けられています。 一方、リモートワークにはこのような定義がありません。双方の違いとしては、『定義の有無』が挙げられます。 例えば、インターネットなどの通信技術を全く使わずに、会社から離れた場所で業務に携わる働き方があるなら、テレワークの定義には当てはまりません。
内容に大きな違いはない
離れた場所で働くという点においては、テレワークもリモートワークもほとんど同じ意味を示す言葉です。 自治体・省庁・大企業の場合はテレワーク、IT企業やフリーランスの場合はリモートワークという分け方をされることもありますが、あくまでもイメージに過ぎません。双方の内容に大きな違いはないと捉えてよいでしょう。 なお、副業や兼業が一般的なアメリカには、正社員や個人事業主など、雇用形態を区切る概念がほとんどありません。 そのため、アメリカでは、オフィスで働かない人を総称して、テレワーカーやリモートワーカーと呼んでいます。
認知度が高いのは『テレワーク』
テレワークとリモートワークのうち、一般的な認知度が高いのはテレワークです。どちらを使えばよいか迷ったときは、基本的にテレワークを選ぶとよいでしょう。 厚生労働省や総務省で定義が定められていることもあり、省庁・自治体・大企業では、テレワークの方を使用しています。 テレワーク関連の助成金・補助金制度に申し込みをしたり、大企業を相手にテレワーク関連のやり取りをしたりする場合は、テレワークを使うのが好ましいといえるでしょう。 一方、リモートワークには、『より自由度が高い働き方』というイメージが強い側面もあります。 特定の組織に属さず、業務委託契約で仕事をするフリーランスなどの働き方をいう場合は、リモートワークの方がふさわしい場合もあるでしょう。
企業が導入しているテレワークは3種類
企業に勤める従業員が行う雇用型のテレワークは、働く場所により『在宅勤務』『モバイルワーク』『サテライトオフィス』の3種類に分けられます。それぞれの特徴をチェックしましょう。
子育てや介護と両立『在宅勤務』
在宅勤務は、自宅で業務に従事するタイプのテレワークです。一般的には、自分のパソコンをインターネットにつなぎ、チャットやビデオ会議ツールでやり取りしながら作業を進めます。 自宅から出ずに働けるため、通勤にかかるコストを削減できることが特徴です。従業員が抱える通勤へのストレスも軽減できるでしょう。 子育てや介護などで、家から出られない人にも向いているスタイルです。これまでは仕事を辞めざるを得なかった人も、在宅勤務で仕事と子育て・介護を両立できます。 週にどのくらい在宅勤務させるかは、企業によりさまざまです。曜日を決めているケースや、週に何日か自由に在宅勤務できるルールを定めているケースなどがあります。
働く場所を選ばない『モバイルワーク』
モバイルワークは、ノートパソコン・タブレット・スマホなどのモバイル端末を使い、移動中の車内や営業先、カフェなどで働くスタイルのテレワークです。 働く場所を自宅などに限定しないことから、外回りの営業に向く働き方の形態といえます。営業先を訪問する合間に、資料をまとめるなどの作業が可能なため、時間を有効活用できることがメリットです。 モバイルワークでは、主に無料Wi-Fiが使える施設や店舗を利用することになるでしょう。実際に、ネット環境が充実した施設や店舗は増えており、外出先でも仕事をしやすい世の中になりつつあるといえます。 一方、無料Wi-Fiから不正アクセスされる恐れがあることや、端末の紛失・盗難のリスクがあることなど、ほかのテレワークに比べセキュリティ面に不安があります。
勤務地以外に出勤『サテライトオフィス』
サテライトオフィスは、本社以外のオフィススペースに勤務するタイプのテレワークです。一般的に、都市部の企業は地方に、地方の企業は都市部に、サテライトオフィスを設けます。 遠方に住んでいる優秀な人材を採用できることが、サテライトオフィスの大きなメリットです。各地にサテライトオフィスを設けることで、採用のターゲットを広げられます。 出張が多い企業なら、サテライトオフィスがあれば、従業員が本社に帰ることなく業務に取り組めます。 デメリットとしては、施設の維持費を負担しなければならないことが挙げられるでしょう。在宅勤務やモバイルワークと比較し、導入すべきか考慮する必要があります。
テレワークによる企業のメリット・デメリット
テレワークは、企業・従業員・社会に対し、さまざまなメリットをもたらすことが期待されています。企業が受ける主なメリット・デメリットを紹介します。
企業イメージの向上
テレワークを導入することで、育児・介護と仕事のどちらかを選ばざるを得ない状況の人に、両立する選択肢を与えられます。 女性・高齢者・障がい者など、さまざまな事情で通勤が困難な人にとっても、就業のチャンスが増えることになるため、メリットをもたらすでしょう。 少子高齢化が進む現代において、労働人口の減少をカバーできることは、大きな社会貢献になります。 テレワークのある企業は『柔軟かつ多様な就労形態を認めてくれる会社』として、世の中からのイメージが向上するでしょう。
離職率の低下
ライフスタイルの変化により、まともに通勤できなくなりそうな人も、テレワークを導入している企業なら仕事を辞めずに済みます。 テレワークで自分の時間が増えることも、離職率の低下につながるメリットです。ワークライフバランスを実現しやすい企業なら、誰もが長く働きたいと思うでしょう。 人材の流出を防ぐだけでなく、人材を獲得しやすくなる側面もあります。働きやすい環境が整っている企業は、優秀な人材も集まりやすくなります。
社員の自己管理が難しい
テレワークの代表的なデメリットとして、社員の自己管理が難しいことが挙げられます。会社の目が届きにくくなるため、意識の低い社員はサボりがちになる恐れがあります。 働き過ぎる社員が出やすいことも、テレワークのデメリットです。仕事とプライベートの時間的な線引きがしにくくなり、過剰労働してしまう社員もいるでしょう。 これらの課題を改善するためには、教育による意識改革を進めつつ、技術的な対策を練ることも重要です。 勤怠管理ツールを導入すれば、リアルタイムで勤務状況を監視できる機能が備わっているため、企業側でも管理体制を整えられます。
テレワークが向いている職種
製造業・販売業・福祉業など、テレワークに向かない職種でテレワークを導入しても、十分なメリットを生み出せないでしょう。 テレワークが向いている職種を知り、自社に導入する価値があるのかを検討することが重要です。
コスト削減で生産性向上『事務職』
経理・総務・人事・営業事務など、バックオフィス業務に従事する事務職は、テレワークに向いた職種です。 書類の作成・編集・整理など、1人でも淡々とこなせる業務の中には、出社せずにできる作業も数多くあります。 事務職をテレワーク化することで、通勤コストやオフィスコストの削減につながるため、生産性の向上を期待できることもメリットです。 やり取りを必要とする作業がある場合も、コミュニケーションツールを導入すれば、チャットやWeb会議でほとんどの目的は果たせるでしょう。
電話やメールで解決『カスタマーサポート』
企業の顧客対応部署であるカスタマーサポートも、テレワークに適した職種です。顧客からの問い合わせに対応できればよいため、電話・メール・チャットで解決するでしょう。 やり取りの手順などをマニュアル化しておけば、サポートも不要です。他部署とのコミュニケーションが必要な場面でも、メールやチャットで済むでしょう。 近年は、多くの企業でカスタマーサポートをテレワーク化しています。受付スタッフを1カ所に集めるカスタマーサポートセンターなどを設ける必要がないため、コスト面でも大きなメリットがあります。
まとめ
テレワークとリモートワークは、定義の有無以外に大きな違いはありません。使い分けに迷った場合は、認知度の高いテレワークを使うとよいでしょう。 テレワークを導入すると、企業イメージの向上や離職率の低下といったメリットがもたらされます。事務職やカスタマーサポートのある企業なら、積極的に導入を検討しましょう。