テレワークでは「コミュニケーションをどうとるか」のルール決めが必要です。情報共有はタイムリーに行い、抜け漏れがないようにしなければなりません。社員が一人で問題や悩みを抱えないよう、身心のケアや気遣いも忘れないようにしましょう。
円滑なコミュニケーションを目指すルール作り
テレワークを導入するには、コミュニケーションを円滑にするための環境づくりが欠かせません。チームのタスク管理や人事評価の基準、在籍の確認など、企業が整備しなければならないルールはたくさんあります。
安心して働ける環境にするために必須
テレワーク導入前に『労働基準法』に基づいた就業規則を定める必要があります。
通常勤務とテレワーク勤務時の労働時間制度及び条件が同じである場合は既存のルールがそのまま使用できますが、ほとんどの企業では新たなルールづくりが必要となるでしょう。
特に、管理者が頭を抱えるのが『部下の勤務怠慢』や『過剰労働』です。一方、社員は「仕事を怠けていると思われていないか?」「評価が下がるのではないか?」という不安を抱いています。
就業規則で『始業・終業時刻の設定』『在席・離席確認』を明確に定めておけば、これらの不安は軽減されるでしょう。
決めたルールは社内のデータベースで共有し、社員がいつでも確認できるようにしておきます。同時に、ルールやガイドラインを周知させるための説明会も定期的に開催しましょう。
目標に合わせてルールを整理
ルールを設定する前に、テレワークに切り替える理由を明確にし、企業の考え方を社員と共有する必要があります。
目的や意義が感じられなければ生産性は低下し、「オフィスワークの方が良かった」という結果につながりかねません。「世の中の流れに合わせてテレワークにする」という理由だけでは不十分です。
各企業が持つ価値観や行動規範を『企業文化』と呼びます。ビジョン・使命・価値観・慣例などによって成り立っており、従業員と企業との間で常に共有されるべきものです。
テレワーク導入時は企業文化や社員同士のつながりを損なわないようにして、新たなルールを整備していかなければなりません。
決められた時間内で質の高い業務を
時間や場所にとらわれない柔軟な働き方ができる反面、テレワークでは業務の『生産性』や『質の高さ』が問題になるでしょう。既にテレワークを導入した企業では、隠れ残業の問題も浮上しています。
勤務時間がダラダラと伸びやすいテレワーク
テレワークのメリットは通勤ストレスから解放され、自宅というリラックスした環境で働ける点です。介護や子育てとも両立がしやすい上に、自分のペースで仕事ができるのも良いところでしょう。
一方で、プライベートと仕事の境界線が曖昧になり、勤務時間がダラダラと伸びるリスクが潜んでいます。残業が申請しにくく、『隠れ残業』や『隠れ仕事』が増えてしまう可能性も否定できません。
過剰労働は生産性の低下を招くと共に、社員の身心の健康を損ないます。
企業側はコンプライアンスを強化するとともに、残業が可視化できるシステムの導入を検討しましょう。外部のPCから業務システムにアクセスする形態の場合は、深夜・休日の『アクセス制限』も有効です。
連絡可能な時間を明確にする
時間や空間が共有できない環境下では、相手が何をしているのかが分からず「今、連絡をしていいのだろうか?」と戸惑う人が多くなります。
この場合、チーム内でルールを設定し、『連絡可能な時間帯』を明確にしなければならないでしょう。
グループウェアやカレンダーアプリなどでスケジュールを共有したり、ビジネスチャットのステータス機能を設定したりして、自分の状況を相手に知らせる工夫も必要です。
テレワークでは、コミュニケーションや連絡のツールとして、ビジネスチャットやWeb会議ツールなどが用いられます。
いくら自宅にいるからといって、夜中や休日の連絡は非常識です。「緊急性がない限りは、勤務時間外に連絡はしない」などのルールも設けましょう。
離職や生産性低下を防ぐ
コミュニケーションの機会が減ると、1人で問題を抱え込む社員が増加します。業務に行き詰まれば、生産性が低下するのは誰の目にも明らかです。心理的な負担が増せば離職にもつながります。
社内のルールを整備する際は『社員のケア』もしっかりと盛り込みましょう。
心身の健康状態を把握する
企業には快適な職場環境を整え、社員の健康と安全を守る義務があります。自宅勤務になると今まで以上に管理が難しくなりますが、社員の状態を把握する新たな仕組みを整えなければなりません。
テレワークでは社員同士の交流の機会が減り、孤独感や不安感を抱きやすくなります。周囲もそれに気付きにくく、知らず知らずのうちに「リモートうつ」を発症してしまうケースがあるようです。
「自分は組織に必要なのだろうか」という気持ちが湧き、組織への帰属意識が薄れてしまう人もいるでしょう。
重要なのは会社が社員に対して『気遣い』を示すことです。メンタルケアのクラウドサービスを導入したり、チャットで相談ルームを設けたりするなどして、社員の身心のケアを怠らないようにしましょう。
定期的にWeb会議で顔を合わせる
完全な在宅勤務は仕事への緊張感を薄れさせます。社員同士が顔を合わせなくなれば、『チームの連帯感』がなくなり、生産性の低下を招くでしょう。
この問題を解決するには、Web会議ツールを活用した『対面ミーティング』が有用です。毎朝15分間の朝礼形式でも良いですし、週1回の定例ミーティングでも構いません。全員が顔を出して参加し、コミュニケーションを図ることが重要です。
定期的なミーティングの開催により、在宅勤務でも緊張感やモチベーションが維持できます。「離れていても一緒に働いている」という協働意識も生まれるでしょう。
チャットでは丁寧な表現や反応が大事
テレワークでは『チャット』でのコミュニケーションが中心です。やりとりは原則、文字のみのため、相手に気持ちや意図が伝わりにくい部分があります。部下に対し、指示やフィードバックを行う際は対面時よりも丁寧な表現を心がけましょう。
「察してほしい」は通用しない
日本は、『暗黙の了解』や『空気を読む』が一般的なハイコンテクスト文化です。業務においても、相手の意図を読んで行動するのが当然とされていますが、それが通用するのは対面時のみといっても良いでしょう。
対面の場合、顔の表情や声色で業務の重要度や緊急性が表せます。しかし、文字のみでやりとりをするチャットでは「このくらい察してほしい」という気持ちがあると、情報がうまく伝わりません。
基本的なことですが、相手に説明をするときは『誰が・誰に・何を』を省略するのはNGです。文字だけでダラダラと説明しようとせず、資料や画像も活用しましょう。絵文字や顔文字もニュアンスを伝えるのに役立ちます。
若手も便利機能を使いやすいように
ビジネスチャットにはさまざまな便利機能が付帯しています。
ただし、社員全員がその特性を理解していなければ、便利機能のメリットは享受できません。ビジネスチャットの使い方を周知させると共に、『利用ルール』を社内で共有しておく必要があります。
- メンション機能:メッセージを読んでもらいたい相手が指定できる
- ステータス機能:自分の状態が相手に表示できる(外出中・離席中など)
- リアクション機能:相手のメッセージに対するリアクションができる
- 絵文字:メッセージのニュアンスが伝えられる
特に、若手社員は「上司からのメッセージに絵文字やリアクションを入れていいのか?」と迷ってしまいがちです。
毎回、文字で返信するのは手間が掛かるため、「チャットを読んだら、とりあえずリアクションを入れる」など、一定のルールを設けましょう。
タイムリーな情報共有を徹底する
テレワークでは『情報共有』も大きな課題です。意思疎通や共有がうまくいかないと、「言った・言わない」で混乱を招くことが予想されます。情報はすべて文字に落とし込み、社員がいつでも閲覧できるような仕組みを作りましょう。
情報の抜け漏れをなくし業務効率化
意思疎通の機会が多いオフィスワークであれば情報は常に共有されますが、テレワークになると担当者だけが情報を把握する『情報の属人化』が起こる可能性が高いでしょう。
情報を幅広く共有するために、重要度・緊急度ごとの『通知ルール』を定めておく必要があります。
やりとりの一部始終が記録される『ビジネスチャット』も有用です。「言った・言わない」のトラブルが回避できる上、検索機能を使えば必要な情報がすぐに探せます。
会議や取引で決定事項があった場合は、期日・確認事項・担当者の名前などを記載しておきましょう。
電話やメールは、決定事項までのコミュニケーションのプロセスが不透明になる可能性があるため、テレワークではあえてチャットに協議の経過のやりとりを残すという方法も情報共有のためには有効です。
目的の情報にすぐアクセスできる環境が理想
社内通知でよく使われるツールと言えば『メール』ですが、「相手がいつ読むか分からない」「大量のメールに重要な情報が埋もれていく」といった欠点があります。
メールではなく社員全員がアクセス可能な『ポータルサイト』やオンラインストレージを活用した『ファイル共有システム』を用意し、オンラインでアクセスできるようにしましょう。
業務のすべてを社内ポータルやファイル共有の仕組み上に集中させることによって、情報共有の効率が上がります。「ファイルが散在し管理ができない…」「社内メンバーとテレワークメンバー間で情報格差がある…」といった問題も解決されるでしょう。
まとめ
テレワークでは自社の目標や企業文化に合ったルール作りが求められます。
『コミュニケーション不足』や『情報の抜け漏れ』などによる生産性の低下も予想されるため、さまざまなツールを活用しながら、開かれたプラットフォームを作ることが重要になるでしょう。
また、社員への気遣いやモチベーション維持の仕組みに加え、 心身のケアも忘れてはいけません。働く場所を問わずに 常に最高のパフォーマンスが発揮できるような環境を整えましょう。