テレワークでの円滑なコミュニケーションのコツ。能力を伸ばす環境にワークが成功するかは、いかにコミュニケーションを円滑に行うかに掛かっています。在宅勤務で社員が抱く不安を解決するとともに、従来とは違った管理体制に切り替える必要もあるでしょう。一人一人の能力を伸ばす環境づくりのコツを紹介します。
テレワークで社員が抱く不安例
出社せずに自宅にて仕事を行うテレワークは、「通勤時間が節約できる」「子育てや介護との両立がしやすい」などのメリットがあります。一方で、これまでとは違う仕事環境に戸惑い、将来に不安を抱く社員が増えています。
「自分のキャリアは大丈夫なのだろうか」
テレワークでは対面の機会が減少し、いつ・どこで・誰が・何をしているかを把握するのが困難です。上司が部下の様子を直接確認できなければ、勤務態度や業務に対する評価が正確に行われません。
上司は「部下をどうやって評価したらいいのか?」に悩む一方で、部下は「ちゃんと評価されるのか?」と不安になってしまうのです。
顔が見えない中で、人事評価は『成果主義』へとシフトされます。すると、『後輩への教え方が丁寧』『協調性が高い』などの成果に直結しない部分が評価されなくなる可能性があるでしょう。
また、テレワークでは仕事内容が既存の業務の繰り返しに偏りがちです。新しいことに挑戦する機会が失われれば、社員のキャリアアップのチャンスも減ってしまいます。
「一人でやっていけるだろうか」
テレワークは「一人でやっていけるだろうか」という不安や孤独感も社員に抱かせます。
開始直後は『通勤ストレス』から解放されたうれしさが勝りますが、1カ月、2カ月と日が経つにつれ『孤独ストレス』が溜まり始めるのです。
その原因の一つが『コミュニケーション不足』です。テレワークではビデオ通話や電話、チャットなどがコミュニケーション手段として使われますが、連絡や業務報告がメインとなり、雑談をする機会が失われます。
とりわけ、友人が少ない人や地域や家族との関わりがない人は人と触れ合う機会がほぼなくなり、孤独感に悩まされてしまうのです。
閉鎖的な空間に長時間いればモチベーションが低下したり、うつ状態になってしまったりするケースもあるでしょう。
「部下の管理が難しいのでは?」
上司の立場である社員はテレワークによって「部下の管理が難しくなるのでは?」と感じています。働きぶりが見えない分、「怠けていないだろうか」「指示は正確に伝わっているのだろうか」という不安が生まれるのです。
部下の行動を全て把握しようとすると、上司やマネージャーはそれだけで疲弊してしまい、本来の仕事ができなくなる可能性もあります。
会社側は監視体制を強化するよりも、監視しなくてもチームが回るような仕組みづくりを推し進める必要があるでしょう。
テレワークを円滑に進めるポイント
テレワークを円滑に進めるには、テレワークに適した環境づくりやルール設定が重要です。勤務体制の変化に不安を抱える社員の心を置き去りにしないようにしましょう。
社員の不安を放置しない
時間と空間を共有しないテレワークでは、コミュニケーションの機会が減ります。「上司に相談したいけど、いつ話しかけていいのか分からない」という人は多く、問題や不安が放置されがちです。
顔が見えない分、これまで以上に『部下の真意』に耳を傾ける姿勢が重要になってきます。相手が言ったことを表層で判断せず、「なぜ・どうして?」と深掘りする習慣を付けましょう。
また、テレワークの生産性は『家庭環境』に左右されます。「小さな子どもと義父母がいて、家で仕事がしにくい…」という人も少なくありません。
家族構成・仕事のできる時間帯・作業環境など、社員がどんな状況で仕事をしているのかを社内で共有しておくことも必要です。
連絡方法のルール整備をする
テレワークでは、会議ツール・電話・ビジネスチャット・メールなどのオンラインツールが活用されます。
対面での意思疎通が難しい中でも迅速なやりとりが可能となりますが、連絡方法のルール整備は必須でしょう。
チャットはメールよりもコメントがしやすく、複数人が同時に参加できる点が強みです。
一方で、膨大なメッセージがチャット上で飛び交うと、大事な情報が埋もれてしまうおそれがあります。相手が自分のコメントを確認したかどうかも気になるところでしょう。
「長文は別の連絡方法を使う」「即レスができない時は一時回答を残す」など、ルールを決めておくと混乱がありません。
監視ではなく体制を変える
社員の働きぶりが見えない分、多くの企業は勤怠管理の難しさに頭を抱えています。
Webカメラを常時オンにすることを求めるところもあり、「管理が監視になっている」「プライベートが覗かれている」と感じる社員も少なくないようです。
監視体制が強化されるとこれまでの信頼関係が崩れ始め、結果的に生産性の低下につながります。企業側は監視しなくても仕事が回る体制を整えることが重要でしょう。
テレワーク導入に伴い、従来の『メンバーシップ型』から『ジョブ型』の働き方に切り替える企業が増えています。一人一人の役割を定め、業務範囲と目標を明確に設定すれば、テレワーク中のさぼりも発生しにくくなるでしょう。
- メンバーシップ型:社員の職務範囲を限定せずにローテーションで担当させる
- ジョブ型:仕事内容に対して人材をあてがう
孤独感を生まないために
テレワークによって生じる『孤独感』は個人だけの問題ではありません。組織で働く意義が薄れ、チームワークの低下や離職率の増加にもつながります。企業はどんな対策を取れば良いのでしょうか?
相談しやすい環境をつくり「横のつながり」強化
喫煙所や給湯室での雑談の機会がなくなり社員間の交流が減ると、一人で不安を抱え込んだり、重大な問題が放置されてしまったりとさまざまな面で弊害が生じます。
上司と部下の『縦のつながり』はもちろんですが、社員同士の『横のつながり』を強化する対策を立てましょう。一人一人が安心して発言できる状態が確保されれば、チーム全体のパフォーマンスも上がります。
横のつながりを強化する具体例としては『雑談ルーム』の設置が挙げられます。専用のグループチャットを設けると何でも気兼ねなく話せ、孤独感が和らぎます。ふとした会話から新たなアイデアが生まれる可能性もあるでしょう。
サンクスカードやピアボーナス制度を活用
テレワークで時間や空間を共有できない状態が続くと、『チームの一体感』や『仲間意識』が薄れ始めます。
オンライン上で雑談の機会を意図的に設けるほかに、『サンクスカード』や『ピアボーナス』といった制度を導入するのも一つの手です。
サンクスカードは日頃の感謝をカードに記して送り合うシステムで、オンラインサービスでは『OKWAVE GRATICA』が有名です。ピアボーナスは感謝の気持ちだけでなく、社員間で少額の報酬を送り合う仕組みを指します。
お互い認め合い、感謝の気持ちを示すことで仲間同士の信頼関係が強固なものになるでしょう。「自分はこの組織に必要とされているのだ」という存在意義が再確認できるため、仕事へのモチベーションも高まります。
円滑に業務を進めるには
テレワークを早い段階で導入している企業では、社員同士のスケジュール共有が当たり前になっています。業務を円滑に進める上では、情報の可視化や共有化が欠かせないのです。
企業によっては、従来の管理体制を変える必要があるかもしれません。
スケジュールを共有
テレワークではメンバーのスケジュールを共有し、誰が・何をしているかが把握できるようにしておきましょう。
自分の予定や仕事の進捗状況をこまめにアップすることで、相手もスケジュールが練りやすくなりますし、事務的な連絡や報告に掛かる時間が大幅に短縮できます。
上司に相談ごとがある場合、『会議予定』や『外出予定』を避けて連絡ができるため、「いつ話しかけていいか分からない…」といった悩みも解決されるでしょう。
テレワークの広がりに伴い、オンラインで使えるさまざまな『スケジュール管理ツール』が登場しています。
ペアを作って作業させる
オフィスワーク時は上司が部下に細かく指示し、あらゆる業務を管理する『マイクロマネジメント』が中心だったかもしれません。
テレワーク導入後は仕事の基本的な方針を示した上で部下の自主性を重んじる『マクロマネジメント』に切り替える必要があります。
切り替えをスムーズにするために取り入れたいのが2人1組で行う『ペアワーク』です。業務の属人化が防げるほか、多角的な視野に立って作業が行えます。会話量が増え、新たなアイデアも生まれるでしょう。
特に新入社員や異動などで在籍期間が短い社員については、『メンター制』を導入して、業務知識の継承や仕事の進め方を身近な人に相談しやすい体制を作ることも効果的です。
言いにくいことを伝える
「どう部下を指導するか」はテレワークにおける大きな課題の一つです。オフィスワーク時と同じ指導方法や伝え方を続けていると、さまざまなすれ違いが生まれます。言いにくいことを伝えるためのコツとツールの使い方について解説します。
文字だけでは誤解が生まれやすい
日常的な連絡手段には、メールやビジネスチャットなどのツールが活用されます。表情や声色などの視覚的情報が遮断された『文字だけのやりとり』はさまざまな誤解が生まれる原因になっているようです。
例えば、部下へのフィードバックをする際、婉曲表現を使わずにストレートに伝えると相手に「きつい」「冷たい」といった印象を与えます。
テレワークではネガティブな表現は極力避け、ポジティブな言葉を使う配慮が求められるのです。
また、言語化能力が低いと、業務の緊急度や重要度が相手に伝わらず、納期に遅れてしまうことも考えられるでしょう。業務連絡以外はビデオを活用するなど、時と場合に応じてツールを使い分ける必要があります。
ビデオツールを活用する
文字だけのビジネスチャットは相手に心が伝わらず、冷たい印象になってしまいがちです。フィードバックや相手に注意をする際は『ビデオツール』を活用しましょう。
画面越しに相手の表情や声色が分かるため、対面にほぼ近い形のコミュニケーションが実現します。資料を簡単に共有できる機能を持つものもあり、情報共有がよりスムーズにできるでしょう。
一方で、ビデオツールならではの注意点もあります。
大勢が参加するビデオ会議で特定の人に説教をしたり、個人的な話をしたりすると、参加者全員の貴重な時間を奪ってしまいます。加えて、説教を衆目に晒せば、チームの雰囲気が悪くなってしまうでしょう。
相手のタイプを理解して指導する
会社にはさまざまなタイプの人がいます。人付き合いよりも自分の仕事を重視する人もいれば、メンバーとのコミュニケーションを重視する人もいるでしょう。
テレワーク導入後、上司はこれまで以上に『相手のタイプに合った指導』が求められます。
例えば、『仕事重視型』の人にとってテレワークは生産性が高まる絶好の働き方です。あれこれ干渉をせず、連絡事項はまとめて完結に伝えるのが理想でしょう。
一方、『コミュニケーション重視型』はテレワークで孤独を感じてしまいがちです。ミーティングや面談を設けるなどして、オンラインで会話する機会を増やしてあげましょう。
また、フィードバックを行う時は、客観的かつ具体的な表現が求められます。「それは良くない」と主観で伝えずに「なぜこうなったのか」という相手の考えもしっかりと受け止めなければなりません。
まとめ
テレワークの成功は「社員の不安をいかに払拭できるか」が鍵になります。コミュニケーション不足による孤独感や将来のキャリアへの不安感が充満すると、組織全体のモチベーションや生産性の低下につながるでしょう。
まずは、一人一人が安心して仕事ができる環境づくりが必要です。これまでのマネジメント体制を大きく変えざるを得ない企業も出てくるでしょう。