大手時計メーカーがクラウドストレージで創出する未来ー 伴走支援で150TBのデータを移行
「市民に愛され親しまれるものづくり」を目指し、主な事業として時計の製造・販売を手掛けるシチズン時計株式会社(以下、シチズン時計)。目まぐるしく変化する社会環境に対応しながら、常に新たな価値を創造し続けています。
従来のオンプレミス型ファイルサーバのリプレースを機に、クラウドストレージFileforceへの移行を決断。本社のある東京事業所のクラウド移行が完了し、今後はグループ各社での展開も検討しています。今回は、Fileforceの導入・活用にも深く関わる情報システム部IT環境課の増田氏、外崎氏、西村氏、黒瀬氏 の4名に話を伺いました。
ハードウェアの老朽化更新やデータ肥大化、
運用負荷の課題に「クラウドファースト」で挑む
シチズン時計では、2023年にグループの長期ビジョンとして「シチズングループビジョン2030」を策定し、”豊かな未来(とき)をつなぐ、Crafting a new tomorrow”を新たなビジョンとして掲げています。その中の大項目としては、ユーザ視点での価値の創出・向上を継続的に実現するためのデジタルトランスフォーメーション(DX)を挙げており、まさに取り組みの最中と言えます。
時計事業として国内外に約30拠点(2024年2月時点)を構えるシチズン時計では、製造業という特性上、一般的なオフィスドキュメント、設計・製造に用いる図面や管理表といった、多種多様かつ大量のファイルをグループ全体で扱っています。これまでは、オンプレミス型ファイルサーバを各拠点に設置し、分散ファイルシステム(Distributed File System: DFS)にて管理してきました。
「クラウドストレージへの移行を検討するきっかけとなったのは、運用面の課題です。従来のオンプレミス型では、ハードウェアの運用が大きな負担になっていました。トラブル対応やメンテナンス、ディスクの交換などに加えて、約5年に1回、老朽更新を要します。その際には、当然、データの移行や切り替えに対するスケジュール調整や準備も必要です。」(増田氏)
また、管理するファイルは設計や製造にかかわるデータといったどれも重要なものです。従業員に対しては定期的に「不要なファイルは削除してほしい」と案内するものの、当然減らすことは難しく、データは肥大化していったといいます。
「図面などもあり、こちらから削除対象のファイルを指定することもできず、容量はどんどん増えていきました。従来どおりオンプレミスで運用していくとなると、5年先を見据えたサイズを用意しなければなりません」(黒瀬氏)
そういった情報システム部門の課題に加え、情報システム部としても3年ほど前から「クラウドファースト」を掲げ、老朽更新などに際して「新しい環境はパブリッククラウドへ移行するように」と案内していたなかで、ファイルサーバについてもハードウェアの更新期限がクラウド移行を後押ししました。
「シチズングループでは、グループ会社がそれぞれでの方法でファイル管理を行っているため、まずはクラウド化のスタートとして本社が所在する東京事業所から移行することにしました」(西村氏)
手厚いデータ移行支援と、ユーザにすぐ馴染む操作性を評価
クラウドストレージの導入を検討し始めた当初には、ベンダーから著名なグローバルサービスを紹介があったといいます。
「最初に紹介されたクラウドストレージサービスはユーザアカウントに紐づく運用となってしまい、ユーザにとって使い勝手が変わることの負担が問題と感じました。また、データ移行の想定スケジュールでは、我々が持っているオンプレミス型ファイルサーバのリプレース期間に間に合わないことがわかってきたんです。IaaS上にファイルサーバを構築する手法も考えましたが、費用対効果や運用の手間を考え難しいと判断しました」(西村氏)
この時ベンダーから提示されたデータ移行期間は、なんと3年。さらに、データ移行は自社で行う必要があったといいます。
「データ移行サービスのみを提供する会社も存在してるようですが、それでは想定以上の費用が発生してしまいます。弊社のように、膨大なデータを抱える企業にとっては、データ移行まで含めて提供されることが理想でした」(西村氏)
こうして再度サービス探しから始めることとなり、Fileforceに巡りついたといいます。
「Fileforce導入の決め手はいくつかありますが、ひとつは、データ移行をサポートしてもらえる点でした。私たちのニーズに柔軟に応えてもらえる点も魅力的でした。高ポイントだったのは、オンプレミス型ファイルサーバと同じ感覚で運用できるところ。ユーザにすぐに馴染んでもらえる、他に類を見ないクラウドストレージだと感じました」(西村氏)
トライアル利用で使用感を確認したのちに運用設計、導入、設定、データ移行までをファイルフォースが伴走で支援し、データ移行は約5カ月で大きなトラブルもなく完了。他のクラウドストレージでは3年と言われた移行期間も、Fileforcceではテスト環境の用意から実作業完了まで約1年と、ハードウェア更新の期間に収まりました。
「クラウドを利用していることに気づかない」使いやすさと、管理負担の面で大きな成果
移行後の成果として、管理者・ユーザ両者の目線でこう評価します。
「かなり大がかりな移行であったため、安定して運用できるようになるまでにはどうしても時間がかかります。しかし、問い合わせれば迅速に対応してもらえたため、非常に安心できました。運用開始から1ヶ月ほどのあいだで最適な利用ができるよう様々な支援をしてもらい、どんどん使える状態になっていきました」(黒瀬氏)
「テレワークの際にはVPNに接続してファイルサーバにアクセスする必要がありましたが、移行後は不要になりました。また海外に駐在している従業員からは、以前よりも社外からのアクセスが若干早くなったと評価が高いです」(外崎氏)
「管理者としては、導入後のアップデートでランサムウェアへの対応がなされたところが非常に助かりました。オンプレミスだと防げなかったものですので、これは非常に安心して使えるなと感じたポイントです」(西村氏)
「管理の負担が減ったところが嬉しいですね。旧サーバでは、ファイルのアクセスログを取るために別のシステムやサーバを用意して監視していました。ただアクセスログサーバの管理者が違うため、いざログを見たいときには、閲覧権限を持つ人に依頼しなければならず負担に感じていました。Fileforceではログ管理も機能に含まれて一括管理できるので、トラブル時も素早く対応できるようになりました」(外崎氏)
「間違えてファイルを削除しても、情報システム部に申請することなくユーザ自身でも復元できるようになった点も大きい。管理側・ユーザ側ともに負担が減ったと感じます」(黒瀬氏)
さらに今後は、従業員の働き方も変わっていくといいます。
「今、シチズン時計の情報システム部では、ノンコア業務は極力外部に依頼したりアウトソーシングしたりして、なくしていこうという取り組みをしています。従業員がよりコアな業務に取り組める環境づくりのためにも、Fileforceを上手に活用していきたいです」(黒瀬氏)
増田氏・西村氏は、「多くの従業員は、クラウドサービスを利用していることには気づいていない」とも話します。「従業員の使用感を変えない、負担をかけない――ファイルサーバの変更に気づかないくらい自然に移行できたのなら、大成功です」
本事例のポイント
- 課題
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- オンプレミス型のファイルサーバの管理負担が大きい
- 管理するデータの肥大化
- DX・クラウドファーストの推進
- 選定理由
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- データ移行のサポートがある
- 従来のサーバと同じように運用できる
- ユーザの使用感が変わらない
- 効果
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- リモート環境や海外拠点からもファイルへのアクセスが早くなった
- ランサムウェア対策のような機能追加があり安全に使い続けられる
- ログ管理も包含されており従来の手間を削減できた
- 管理負担の削減でコア業務に取り組める環境づくりが進められる
※本記事の内容は取材時(2024年2月)の情報です。